10月2日に発表された米雇用統計9月では、雇用者数の増加が事前の予想を大きく下回った。これを受け、米FRBによる利上げ観測は後退し、金相場は一時上昇、その後反落して取引を終えた。金先物中心限月の清算値は1オンス=4,162.30ドル、金現物は1オンス=4140.06ドルで取引を終え、週間では約3.4%安だった。
10年米国債利回りは、2002年以来の高水準にまで上昇した。ただ、先週までの米国債利回りの急上昇にもかかわらず、金価格は1オンス=4,000ドルを下値に底堅く推移するとの相場観は根強い。通常であれば、利息を生まない金は、実質金利の動きと逆方向に動く。2000年以降、2021年までの期間では、金価格の大部分は金利と米ドルの動きで説明できた。利回りがこれほど急上昇したにもかかわらず金が1オンス=4,000ドルを上回っていることは、利回りの動きだけでは説明できない需要がなお存在することを示している。
しかしこの関係は、2022年のロシアによるウクライナ侵攻と、西側諸国の制裁によってロシアの外貨準備の約半分が凍結されたことで、大きく変化した。そして、特に新興諸国の中央銀行が準備資産をドル建て資産から分散させる動きを加速させたことで、金需要は増大、通常なら金価格を押し下げる利上げ局面でも金価格は上昇する要因となった。外貨準備の分散と地政学的なリスクヘッジを背景に構造的に金には高いプレミアムが乗るようになったという訳である。
ただ、金相場 は過去4年で、変動率も格段に大きくなった。今年1月には1オンス=5,595ドルと過去最高値をつけたが、イランを巡る戦争に伴うエネルギー価格主導のインフレにより、その後は1オンス=4,161ドル近辺まで急落した。
もう一つの要因は、政府債務に対する懸念が強まっていることだろう。主要国債に対するリスクプレミアムは拡大している。安全資産のひとつである主要国債の地位が揺るごうとする中、安全資産としての金の地位は、上昇した。通貨でも、主要通貨離れが進む中、リスクを回避しようとする資金は金に向かっている。その一例が、中国であろう。世界最大の金消費国でもある中国は、2026年1―8月累計で、1,077トンの金を輸入したと言われる。年間換算では、輸入量は2015年以来の量で11年ぶりの高水準でとなるペースである。その主要な買い手は中国人民銀行(中央銀行)である。その他の国でも、ポーランド中銀が、準備資産として金の積み増しを積極的に続けており、購入ペースは昨年を既に上回った。 本来なら、金利動向の影響を受けやすい金連動型ETFも買い手のひとつである。同ETFは、金利の上昇に従い、資金が流出、金持ち高を大規模に解消する動きを見せていたが、安全資産としての金の特性やポートフォリオ分散の効果への期待から、資金の流れも反転し始めている。