国内消費が低迷する足元の状況
中国国家統計局は、4月16日、第1四半期の国内総生産(GDP)統計を発表した。前年同期比では5.3%増加し、事前の予想だった同4.9%水準を上回った。2023年第4四半期の同5.2%からも加速したことになる。
これは中国政府の刺激策の結果であると考えられる。特に、1月から2月は、月次の指標でも確認されているとおり主に政府部門の固定資産投資と鉱工業生産の回復に支えられ、国内経済活動に改善の兆しが見られた。景気支援策に手を尽くしてきた中国政府にとってはひと安心といったところだろう。当面は、これが今年の中国経済の原動力になるとみられるが、長期的には企業の利益が圧迫される可能性がある。
一方で、不動産市場は厳しく、不動産投資は縮小傾向が続く深刻な状況で、今後の見通しは改善していない。地方政府も過剰債務という悩ましい問題を抱えている。そんな中、消費者の信頼感回復は望めず、企業活動も早期に大きく伸びが期待できるわけではない。中国経済は引き続き下振れリスクを強く意識しながら見ていく必要があるだろう。実質GDPと名目GDPの差は拡大しており、これは、需要サイドに課題を抱えていることを示唆している。引き続き弱い需要こそが問題である。
中国では、国内需要は弱い状況が続いているが、米国経済の好調さが反映されているため輸出は好調である。そのため、国内市場の整備や国内消費が成長を主導する経済への移行がスローガンとして叫ばれてきたものの、実際には、輸出が景気回復をけん引する「二速経済」の構造になっている。第2四半期も、輸出主導の状況が続く公算は大きいと考えられる。しかし、下半期は経済政策がどれだけ効果を上げるかに掛かってくるのではないか。大手米銀数行は最近、中国経済の2024年GDP成長率を年率で4.5%程度から4.8%前後に上方改定することを発表したが、それでも中国政府の目標である5.0%を下回る点は見通しの厳しさを物語る。
なお、中国人民銀行は小出しに金融緩和策を展開しているが、利下げは、あまり功を奏していない。利下げにより市場の流動性は高まったが、肝心の消費者信頼感は回復せず、消費喚起にはつながっていない。やはり、中国経済の回復には、時間を要することをメインシナリオに置いておきたい。