『ディスインフレの流れは鈍く、利下げまでには時間が掛かる』可能性高まる
2月29日に発表された1月の米個人消費支出(PCE)は前月比0.2%増、個人所得は前月比1%増だった。PCE総合価格指数は前月比0.3%上昇、前年同月比では2.4%上昇だった。PCEコア価格指数は前月比0.4%上昇で、前年比では2.8%上昇だった。インフレ調整後の実質PCEは前月比0.1%減で、5カ月ぶりに減少に転じた。年末のバーゲンシーズンが堅調だったので、この時期に良好だった消費の反動だろう。個人消費を支える実質可処分所得は、横ばいだった。
米FRBは、前回12月のFOMCで示した四半期経済予測(ドットプロット)で、2024年内に0.25%幅の利下げを3回実施することを示していた。ディスインフレの流れが明確になり、今後は利上げではなく利下げの開始に至るというシナリオはメインシナリオであるとされる。しかし、米FRBが重視するPCEコア価格指数は1月に前月比で0.4%上昇、前年比では2.8%上昇した。PCEコア価格指数の前月比での伸びは、過去1年で最大となった。ディスインフレを確認するには、市場が想定するよりも長い時間が掛かると思っておいた方がよさそうである。
インフレ圧力の緩和には手ごたえなし
堅調な米国雇用市場は、賃金の上昇を通じて、個人消費を支えてきた。ただ、この構図で警戒すべきポイントとして、賃金の上昇が特にサービス業での価格上昇に繋がり、恒常的なインフレ圧力となるかどうかという点がある。住宅とエネルギーを除いたサービス業の価格指数は、1月は前月比0.6%上昇し、2022年3月以来の大幅な伸び率だった。これは、FRBにとっては警戒感を持つ数字となるだろう。FRBは、利下げ開始を判断するまでには、相当に辛抱強いスタンスが要求されるだろう。なお、今回のPCEデータは、同会合前に当局者が入手できる最後のPCE統計である。
次回のFOMC会合は3月19~20日に予定されているが、パウエル議長は3月FOMC会合での利下げはないと明言しており、6月FOMCでの利下げ開始を織り込んでいる状態です。従って、3月FOMCの焦点は、ドットプロットの利下げ予想に変化があるかどうかということになるだろう。この点に関しては、メスター・クリーブランド連銀総裁の発言が参考になる。メスター総裁は、サプライチェーンの改善と労働人口の増加が物価上昇を抑えた昨年のように、インフレが急速に鈍化し続けるとは考えにくいと語るとともに、米FRBは物価の上昇圧力を抑制するために、利下げより前に、まだやるべき仕事があるとの認識を示した。ボスティック・アトランタ連銀総裁も、次のアクションが利上げになるとは考えていないが、FRBにはインフレとの闘いのためにまだやるべきことがあると発言した。クーグラーFRB理事も、失業率が顕著に上昇することなく、ディスインフレが進んでいくことを「慎重ながら楽観している」と述べた。いずれも、当面は、現状の水準で金利を維持することを示唆したものと言える。
3月FOMCでは見通しに変化なしも
一方で、FRBが今年内に3回利下げするとした四半期経済報告の見方を変える意見も、表立っては聞こえてこない。基本線は、前回のドットプロットのシナリオを維持するだろうが、3月FOMCでどのようなトーンで議論がなされるか、利下げ見通しを何らか変化させるのかは注目したい。
なお、3月初めにはパウエルFRB議長が上下両院で半期に一度の議会証言を行う予定で、インフレ見通しに何らかの手掛かりを与えるかには気を付けておきたい。