米インフレとの闘いは長期化へ

1月の米消費者物価指数(CPI)は根強いインフレ圧力を示唆

金融市場が最も注目している経済指標だった1月の米消費者物価指数(CPI) が、2月14日発表された。総合CPIは前月比0.5%上昇で、前月12月CPIは速報値の同0.1%低下から同0.1%上昇に上方修正された。前年同月比では6.4%上昇と、前月の同6.5%上昇からわずかに上昇幅は緩和したものの、事前予想の同6.2%上昇を上回った。

変動の大きい食品とエネルギーを除くコアCPIは前月比で0.4%上昇し、前月12月のコアCPIは速報値の同0.3%上昇から同0.4%上昇に上方修正されたため、同幅となった。前年同月比では5.6%上昇した。前月は同5.7%上昇だった。

前年同月比の伸びで見ると、総合CPI、コアCPIともに事前予想を上回ったほか、昨年秋以降ほど上昇幅が緩和したわけではない。米国でのインフレ圧力が高い水準で継続していることを示唆しており、米FRBにとっては金融政策をこれまでの想定以上に引き締めるかどうか悩ましい指標になったといえるだろう。

CPIの内容としては、中古車価格が7カ月連続で下落し、航空運賃は前月比2.1%低下とCPIの押し下げ要因として貢献した。一方でエネルギー価格は3カ月ぶりに前月比で上昇に転じ、総合CPIの約3分の1を占める住居費の伸び(前月比0.7%上昇) とともにCPIの上昇に寄与した。処方箋薬は、同2.1%上昇して過去最大の伸びとなった。被服費は0.8%上昇と、2021年12月以来の大幅な伸びとなった。

モノの消費から、サービス消費へ

米国では、消費がモノからサービスにシフトしてきており、今回のCPIでも明らかに、サービスセクターでの上昇が目立つ。直近の数カ月間で高まったインフレ圧力を押し下げることに寄与した財のディスインフレ兆候は一巡し、勢いを失いつつある。しかし、サービス需要の旺盛さは、雇用市場の逼迫を通じて賃金を押し上げ、インフレ率の伸びを抑制することを阻む構図が見えている。雇用市場での労働者の逼迫が、賃金の伸びとサービス価格の上振れ要因となっている。

もうひとつ、気がかりな点は、インフレ率は賃金上昇ペースを上回っている点である。1月の実質平均時給はインフレ率調整後で前月比0.2%減少と、昨年6月以来の大幅な低下を記録した。前年同月比では1.8%減少となった。賃金も伸びているが、物価の上昇幅に追いついていないとなれば、インフレを抑制する力を強めるために、より積極的な金融政策の引き締めを選択することはありうると考えるべきだろう。

パウエル議長やFRB首脳が言及している追加利上げの検討と政策金利を高い水準で維持する必要性を今回のCPIは裏付ける指標である。ディスインフレの兆候が、サービス分野から出てくるようにならなければ、インフレ高進の沈静化は難しい。やはり、インフレを抑え込む闘いは、長期にわたることになろう。

消費も堅調な米国 ~ 1月米小売売上高

15日に発表された米小売売上高(1月)は、前月比3.0%増と、2021年3月以来、約2年ぶりに大幅に増加、堅調な消費需要を示した。ガソリンと自動車を除いたベースでは同2.6%増だった。昨年12月は同1.1%減と年末商戦の終わりにやや心配なデータだった。

1月の小売売上は13業種の全てで増加した。特に、自動車の売上高は5.9%増と約2年ぶりの高い伸びだった。家具やレストランの売上増加も目立った。飲食店売上は7.2%増で、2021年3月以来の大幅な伸びを示した。ガソリンスタンドの売上高は変わらずだった。国内総生産GDPの算出に使用される飲食店と自動車ディーラー、建材店、ガソリンスタンドを除いたコア売上高でみると1.7%増と、1年ぶりの大幅な伸びとなった。

小売売上高の改善は、個人消費が昨年末にいったん減速した後、持ち直したことを示す。今年の経済見通しは厳しいものが多かったが、少なくとも1月の出だしは堅調だったと言える。金利上昇により借り入れコストが上昇し、物価も高い水準で上がっているにもかかわらず、歴史的な低水準にある失業率が示すとように雇用市場は引き締まり、賃金も伸びていることに支えられて、消費支出が継続している様がうかがえる。

根強いインフレと闘うためにFRBは利上げ継続も

利上げの効果は時間差を伴って発揮される。住居やITセクターなどは、金利に敏感で、売上や企業収益に相対的に早く影響が出る。しかし、こうした影響が米国経済全体には広がっていないという現実を、今週発表された1月の米消費者物価指数CPIと小売売上高は示した。ディスインフレのプロセスが失速し、景気軟化の兆候が限られる中、今回の力強いデータは米金融当局が金利を高水準でより長期にわたって維持する必要があることをサポートする。政策金利のピーク水準は高くなるリスクが強まりつつあると指摘は、あながち単なる警告と受け止めるだけでは足りないだろう。

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