米欧でリセッションシナリオが後退。金利は高止まり見通し強まる。

リセッションシナリオがグローバルに後退。米欧を中心に、金利は高止まりする公算強まる。

ユーロ圏総合 PMI(2月)は52.3と改善

21日、 S&Pグローバル社が発表したユーロ圏の総合購買担当者景気指数PMI(2月) は、速報値で52.3だった。1月の50. 3から幅を伴って改善した。事前予想を上回る改善幅で、9カ月ぶりの高水準をつけた。サービスPMIが53.0となり前月の50. 8から大きく上昇したことが総合指数の上昇に寄与した。一方で、製造業PMIは前月の48.8から48.5へと悪化した。

事業見通し指数は1月の61.2から61.5へと上昇し9カ月ぶりの高い水準をつけた。将来の生産見通し指数も、昨年5月以来の水準に回復しており、先行きの需要に関しては楽観的な見方が強まったことが示された。雇用指数は、5カ月ぶりの水準に上昇し、堅調な労働需要が続いていることを示唆した。

同日に、ドイツの欧州経済研究センター(ZEW)が発表した2月の景況感調査で、期待指数は28.1と昨年2月のロシアによるウクライナ侵攻以降での最も高い水準に回復した。前月は16.9だった。景気見通しに対する信頼感の改善は、これで5カ月連続となった。期待指数の改善は、エネルギー関連企業の収益拡大見通しに加え、輸出企業や消費関連分野での増益期待が膨らんでいることが背景にある。インフレ率上昇が落ち着き、深刻なリセッションへの懸念が後退していることも支援材料となっている。

ユーロ圏の企業活動はサービス業主導で、2月に、9カ月ぶりのペースで拡大したといえる。これにより、ユーロ圏経済は今年第1四半期において縮小を回避できる見通しが強まった。リセッションへの懸念が後退し、インフレ率の上昇もピークから伸びは鈍化しつつある中、景況感は改善に向かっていることは、欧州経済にとってはプラスである。ただ、インフレ率の水準自体はまだ高く、金融引き締めの影響、外需は不透明な見通しと、経済成長が持続するかは、まだ判然としないところがある。

米国経済もしっかしした足取り

S&Pグローバル社が発表した米国の製造業・サービス業合わせた2月の総合購買担当者指数PMI速報値は、50.2だった。1月の46.8から3.4ポイント改善し、経済活動の拡大と縮小の境目である50を8カ月ぶりに上回った。サービス業PMIが50.5と、予想外に改善し昨年6月来となる50台を回復して総合PMIを押上げた。製造業PMIは47.8と、4カ月連続で50を下回ったが、1月の46.9からは改善した。

景気後退懸念が後退し、経済の先行き見通しで、楽観的な見方が広がった可能性がある。物価についても、販売価格指数は4カ月ぶりの高い水準だったように、雇用市場の引き締まりを背景に、賃金の上昇圧力が高まったことで、物価が押し上げられる構図が見えてくる。インフレ高進の要因が賃金上昇にシフトしていることも危惧される。

1月の経済指標で、雇用市場が引き締まり堅調であることが示された他、小売売上高も予想以上に伸びて消費の堅調ぶりが確認された。暖冬や1月の大規模な割引プロモーションといった季節要因が、統計をよく見せたとの懐疑的な見方もあったが、今回のPMIでも2月に入ってなお、消費需要がしっかりしていることが示唆されており、米国経済のリセッションシナリオは大きく後退せざるをえないのではないか。ソフトランディングまたはノーランディングシナリオの可能性が強まりつつある。そうなると、FRBはインフレを制御するという目標に向けて、より明確な姿勢を取ることも可能となり、想定以上の利上げが実施される可能性を取りざたする展開が予想されるだろう。

金利は中短期を中心に上昇、為替ではドルもしっかり

21日の米国債券市場では、米国債が下落し、利回りは全ての年限で2023年に入って最も高い水準まで上昇した。上述のPMI速報値のデータに反応したほか、今週は米国債の新発入札や社債の新規発行が重なっているため、債券の供給圧力が債券価格を押し下げた。2年米国債利回りは4.69%、10年米国債利回りは3.95%まで上昇した。

外国為替市場では米国債利回り上昇を受けて、ドルが主要通貨に対して上昇。ドル円は1ドル=135円台にのせ、ユーロドルは1ユーロ=1.07ドル台を割り込んで1.066ドル台をつけた。24日に上田日銀新総裁候補の国会審議を控えて動きにくいが、不意のドル高で137円台までは有り得るのではないか。米国株式市場は、幅広いセクターで売られ、主要指数は全て値下がりした。S&P500指数は、4,000ポイントの大台を割り込み3,997.34で引けた。昨年12月半ば以来の大幅な下げで、今月に入ってからの上昇分を全て失った。ダウ平均も33,129.59まで値を下げた。金利上昇の圧力を受けてテクノロジー銘柄は下げ幅が大きく、ナスダック総合指数は前日比▲294ポイントの11,492.30で引けた。

米国経済のリセッションシナリオは大きく後退せざるをえないのではないか。ソフトランディングまたはノーランディングシナリオの可能性が強まりつつある。そうなると、FRBはインフレを制御するという目標に向けて、より明確な姿勢を取ることも可能となり、想定以上の利上げが実施される可能性を取りざたする展開が予想されるだろう。FRBによる0.25%の利上げを三回、政策金利は5.25-5.50%に達し、年内はその水準で維持するというシナリオを織り込みに行く展開を想定したほうが良いだろう。この場合、株価は現水準から10%程度下方向に調整、為替ではドル高基調が継続することになるだろう。

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