全人代が閉幕
中国の2024年の全国人民代表大会(全人代)は3月5日から11日まで開催された。全人代の冒頭では、李強首相が、就任後初となる政府活動報告で2024年の中国経済のGDP成長率目標を5%前後に設定すると表明した。また、中国経済の発展モデルを転換し、企業の余剰生産能力を抑えながら構造調整を進め、不動産業や地方政府が抱える重債務のリスクを抑制する方針を示した。政策では、積極的な財政政策を推進し、穏健な金融政策を実施する考えを示した。
政府活動報告では、2024年の財政赤字の目標を対国内総生産(GDP) 比で、3%に設定した。これは2023年の約3.8%からは大幅に縮小されている。地方政府特別債発行枠は23年の3兆8000億元に対し、3兆9000億元に設定した。通常予算には含まれない特別国債は1兆元発行するとした。都市部では1,200万人以上の雇用を創出し、失業率を5.5%程度に維持することを目指すとした。
「成長率目標の達成は容易でない」
成長率目標は、2023年と同水準に据え置かれたが、李首相はその達成が「容易ではない」ことを認め、先行きの不透明感が滲んだ。目標は提示したにも関わらず、具体的にどのようなルートをたどるかということは語られなかった。不動産業と地方政府の抱える債務問題を指摘したことは評価できるが、構造的な問題であるにも関わらず、どこから何に手を付けるのかは示されなかった。口先だけの総論ではなく、実際にどのような行動を採るかについての言及を期待していた金融市場にとってはがっかりな内容だったのではないか。
李首相が方向感を打ち出した領域は、技術革新と先進的な製造業という分野には資源を投じる方針で、これは習近平国家主席が打ち出した「新たな質の生産力」に沿ったものである。政府活動報告では、量子コンピューティングやビッグデータ、人工知能(AI)といった新興産業の発展計画を策定し、技術の自給達成を引き続き目指すことを言及した。また、国家発展改革委員会の報告書では、製造業の外国投資規制を完全撤廃し、通信や医療サービスなどサービス業でも市場アクセス制限を緩和する方針を示した。
財政支援には消極的な中国政府
中国経済は、新型コロナウイルス感染対策を解除した2023年4月以降も、個人消費の弱さや投資リターンの低下といった構造的な問題に直面しており、物価は低迷を続けて、デフレの深刻さが際立ってきている。金融市場の一部では、より強力な財政支援策への言及を期待していたこともあり、全人代開幕後の中国本土の株価は反落する形となった。中国政府は、財政支出を通じた景気支援には消極的な姿勢を維持したままで、市場参加者の期待は膨らんでいない。