ベージュブックの記述
1月17日、米FRB(連邦準備制度理事会)は地区連銀経済報告(ベージュブック)を公表した。同報告書では、12月の経済状況について、底堅い消費が、製造業などでの見通しの弱さを相殺した形となり、懸念されたようなダウンサイドへの動きは見られなかったと指摘した。また、年末のクリスマス休暇期間中に、消費は大半の地区で予想通り横ばいだったほか、ニューヨークを含む3地区では予想を上回ったことを確認し、消費後退・景気失速への不安を払拭する結果で、今後については楽観的な見方を強めているとの認識が示された。そして、大半の地区で、企業部門の成長見通しが前向きか、改善方向にあると指摘した。
インフレ圧力については、全般的に見て、緩和に向かっていると認識する企業が多かったと述べた。価格上昇に対して消費者が買い控える動きを見せるなどしたことで、小売業者が利幅の縮小を余儀なくされ、供給側の値上げの動きに抵抗したとも指摘した。雇用については、ほぼ全ての地区で雇用市場の軟化を示唆する兆候があるとしたが、半分余りの地区は全般的な雇用水準にほとんど変化がなかったと記した。また、多くの地区で、企業は今後1年間の賃金の伸びが鈍化すると予想していることも指摘した。
12月小売売上高は3ヶ月ぶりの大幅増
同日に発表された12月の米国小売売上高は前月比0.6%増と予想を上回り、3カ月ぶりの大幅増加となった。自動車を除いたベースの小売売上高は同0.4%増加だった。
13項目中9つの項目で増加し、特に衣料品や、百貨店を含む総合小売店、無店舗小売りでの売上の伸びが目立った。自動車・同部品の売上高は1.1%増。一方、ガソリン価格の下落を背景に、ガソリンスタンドの売上高は3カ月連続で減少した。クリスマス休暇期間の消費は堅調だったことを確認した。2024年初めも、個人消費の底堅さは続いていることを示唆する内容だった。2023年を通じて、家計支出は上振れしてきたが、その傾向は続いている。
景気の先行きについては、見方分かれる金融市場
しかし、金融市場では、長期化するインフレや金利の上昇で、貯蓄が減少傾向にあり、消費者への圧力が高まっている。売上拡大の勢いは2024年に早晩鈍るとの見方が根強い。そして、雇用や賃金の伸びが鈍化し、金利上昇の遅行効果が経済へのブレーキとなることで、景気の減速感が強まるとのシナリオに繋がっている。
ただ、景気の減速が、どのようなペースで、どれくらいの振れ幅で起こるかを巡っては、確信得られているわけではない。今後は、まさにディスインフレの速度を確認しながら、金利がどれくらい下がるのか水準を探る展開になるだろう。