EU首脳会議で、ロシア産原油の禁輸措置に合意

ハンガリーの反対を抑え込む妥協案

欧州連合は5月30日、ブリュッセルで首脳会議を開催し、ウクライナに侵攻したロシアへの追加制裁措置としてロシア産原油の輸入禁止で合意した。輸入禁止に反対の姿勢を示していたハンガリーには、妥協案として、ハンガリーなどが利用するドルジバ・パイプライン経由の輸入を禁輸対象から当面除外する措置が盛り込まれた。ロシアから海上を経由して欧州連合加盟国に輸送される原油・石油製品は全面購入が禁止される。
この結果、今回の禁輸措置の対象となる原油量は、当初の全面禁輸案からは後退するが、欧州連合全体の輸入量の3分の2以上に上り、9割近くいなるとの試算もある。ミシェルEU大統領は「ロシアの兵器確保に向けた資金源が断たれる、戦争を終わらせる上でロシアに最大の圧力になる」とツイートした。
現在、パイプライン経由で輸入している原油の大部分は、ドイツとポーランド向けで、両国はEUの決定に関わらずロシアからの原油供給を停止する方針を示している。EUは米英などと比べてロシア産石油への依存度が高く、エネルギー輸出大国であるロシアには、経済的に打撃となる。ただ、石油価格の高騰なども予想され、これは欧州経済へも影響が避けられない。
ただし、実施時期は今年末までで、どれほどロシアへの制裁効果があるのか、本当に早期に紛争を停止させたいのかという観点で見ると疑問は残る。
原油以外では、ロシアからの天然ガスの供給を、オランダとデンマークが停止する見通しになった。ロシアの政府系企業であるガスプロム社は、ガス代金をロシア・ルーブルで支払うよう要求していたが、両国のエネルギー関連企業はこれを拒否した。ガスプロム社は31日に天然ガス供給を停止すると公表したと発表した。ガスプロム社はこれまでに、ロシアルーブルでの支払いを拒否したポーランド、ブルガリア、フィンランドへの天然ガス供給を停止している。自国の経済への影響はあるものの、対ロシア制裁を打ち出したい国もあり、EU内は必ずしも一枚岩になれない部分も見え隠れする。

市場の反応は?

市場の反応は、欧州債券利回りが大幅に上昇した。これは5月30日に発表されたドイツの消費者物価指数CPI速報値(5月)が前年同月比8.7%上昇と事前予想を大幅に上回ったためである。ドイツ10年国債利回りはついに1.00%にのせ、1.07%まで上昇した。ECBは次回政策理事会を来週開催する。大規模な資産購入プログラムを停止・撤回するかについて結論が出され、続く7月の理事会では、約10年ぶりに利上げに踏み切る方針が示されるだろう。市場は、ECBが年内に政策金利を1.00%幅で引き上げることを織り込み済みである。
原油相場は、EU合意を受けて、受給の引き締まり観測からロンドンICEブレント原油先物が前日比1.49%高となった。