議事録の内容
25日、米FRBが5月初めに開催された連邦公開市場委員会 (FOMC)の議事要旨を公表した。要旨では、委員の大半が、6月と7月に予定されている今後2回のFOMC会合で、それぞれ0.50%ずつの利上げが必要になると判断していることが明らかとなった。現在、政策金利は0.75%~1.00%水準だが、1.75%~2.00%水準に引き上げられることになる。積極的な金融引き締めを継続することが確認されたことになる。
また金融緩和政策の解除を早めれば(これは中立政策へのアプローチを早めればという意味だと解釈できる)、年内に引き締めの効果によりインフレが抑制できているかどうかを見極める上で良い位置につけることができるとし、早めの行動でインフレ抑制に取り組むことを明言した。早く中立金利に近づけておけば、インフレ抑制効果も期待でき、もし、景気が減速した場合には、インフレ率抑制を確認しながら金利を低下させるカードも得られるとの読みが見え隠れする。7月FOMC会合の後、FRBはインフレや経済成長を見極め、柔軟な姿勢を取る腹積もりだろう。
市場はFOMC議事要旨を好感
市場が警戒していた0.75%幅での利上げは、メインシナリオからは程遠いとの感触を得たのではないか? S&P500指数は25日朝方の取引では下げていたが、FOMC要旨のリリースを受けて、株価は反発した。金利の上昇で警戒感が強まっていたデジタル銘柄も反発は大きく、ナスダック100指数は主要株価指数の中でも上昇が際立った。S&P500指数は、前日比1%高い3,978.73、ダウ平均は同0.6%高い32,120.28ドル、ナスダック総合指数は同1.5%上昇して11,434.74で引けた。米国債市場では、10年米国債利回りは、変わらずの2.75%。金融政策引き締めへの蓋然性が上がったことで2年米国債利回りは小幅に上昇した。同じ理由から、為替も、米ドルが主要通貨に対し上昇した。ユーロドルは1ユーロ=1.0658ドル台、ドル円は1ドル=127円40銭近辺で取引されている。
利上げ幅だけの議論では済まない可能性
金融政策では、引き締め方向の政策としては、利上げと流動性の引き上げ(量的引き締め=QT)があることを忘れてはなるまい。6月1日から、FRBはオン・バランスシートにある8.5兆ドル(1080兆円)規模の債券ポートフォリオの圧縮を開始する。米国債市場及びドル金利には上昇圧力になることには気をつけなければならない。
今回のFOMC議事要旨では、米国債と住宅ローン担保証券(MBS)の償還に伴う保有証券の減少により、市場に「予期せぬ影響」すなわち金利上昇に繋がるリスクを指摘していたこと委員がいることが記されていた。
FRBは、バランスシートにある債券を市場で売却または、償還された債券を再投資しないことで、残高を減らし、量的な引き締め策を講じていく。今回は6月から9月にかけて月間950億ドルの規模で実施される。それだけ市場の流動性が減っていくわけで、これがどの程度の金利上昇圧力となるかは不明である。つまり、利上げ幅が0.50%か0.75%なのかという議論よりも、QTのインパクトがどのようなものになるかは予期できていないのである。市場では心理で動いてしまう部分もあり、このあたりは、注意をしておいたほうが良さそうである。