1BTC=10万米ドルを超える水準に
12月5日、暗号通貨ビットコインが、1BTC=10万米ドルを突破し、101,555ドルまで上昇した。米大統領選でトランプ候補の勝利が決まると、暗号通貨は軒並み買われ、市場全体では、記録的なラリーが起こっている。米国のビットコイン上場投資信託には今年、約320億ドルの純流入があったとも報じられている。また、トランプ候補の当選以降には80億ドル以上の資金が流入しているという。
デジタル資産へのサポートは選挙公約
トランプ氏は、大統領選挙中に、バイデン政権によるデジタル資産への締め付けを解除し、ビットコインを戦略備蓄する制度の創設や、米国を暗号通貨の世界的なハブにするとの構想など、暗号通貨により配慮した規制の枠組みを構築することを訴えてきた。
トランプ氏は、具体的な行動として、米証券取引委員会(SEC)委員長に、暗号通貨支持派で規制緩和に前向きなスタンスを取るポール・アトキンス氏を指名した。規制当局者にデジタル資産支持派を任命することにより、トランプ次期政権が、デジタル資産業界を支援し、米国が世界のデジタル資産の中心地であり続けるとの姿勢を鮮明にする狙いがある。
ポジティブな材料増える
また、立場は異なるが、モスクワで開催された経済フォーラムで、プーチン露大統領が、ビットコインや暗号通貨の使用を禁止することはできないと発言したことも、側面支援する材料となった。
このところのニュースは、暗号通貨は、価値の貯蔵手段の一つであり、インフレリスクに対するヘッジ手段だという暗号通貨強気派の主張を支持するものである点もある。ビットコインはボーダレスな存在であり、世界の主要国の状況が不安定化する中、法定通貨に代わる中立的な通貨として、保有されるに足る存在になるとの見方を強める。
一部には実現に疑問残る材料も
ただ、一部の材料には、実現に疑問の余地が残るものもある。共和党はビットコインの戦略備蓄制度を整えるという構想も支持しているが、それが実現可能かどうかについては十分な議論が必要だろう。また、2022年の市場暴落時に不正が明らかになったように、一部のデジタル資産については、詐欺的な不正の疑いがつきまとっていることも事実である。
また、現在は、法定通貨の中では、米ドルが一人勝ちの様相を見せているが、アメリカでも債務超過は深刻で、トランプ候補の勝利直後には、米国債への不安定化を懸念した売り圧力が高まったことも記憶に新しい。そのなかで、デジタル資産を普及させることは、米国政府にとっては自己矛盾する部分もある。トランプ氏自身も、ドル離れへの懸念は持っていると思われ、ドル離れを指向する国には、関税を100%に引き上げるなどの発言もある。
長期分散の対象に
長期的には、世界の先行き不透明化の中、デジタル資産への分散は進むと考えられる。一時的なラリーに一喜一憂することなく、分散の一環として、保有率を徐々に高めるスタンスを維持・推奨したい。