預金準備率引き下げ・短期金利引き下げ・住宅ローン規制の緩和を同時発表
中国人民銀行が複合的な金融緩和策を発表
中国人民銀行は9月24日、市中銀行の預金準備率を0.5ポイント引き下げることを発表した。この措置により約1兆元の流動性が市場に供給される。また、潘・人民銀行総裁によれば、年内の適切な時期に、さらに0.25-0.5ポイントの範囲で預金準備率を引き下げることを検討するようである。
同時に、中国人民銀行は、主要短期金利の一つである7日物リバースレポ金利を、現行の1.7%から1.5%に引き下げることも発表した。そして、中期貸出制度(MLF)1年物金利をこれまでの2.3%から2.0%に引き下げた(MLFについては、25日に実施)。
更に、住宅購入に関する規制も緩和することを発表、具体的には、既存の住宅ローンの借り入れコストの引き下げや、セカンドハウス購入に関する頭金規制の緩和など、国内住宅市場を下支えするための措置も発表した。
中国人民銀行は、これまで、金融緩和は実施していたものの、人民元安が進行することを嫌って積極的な緩和姿勢を取ってこなかった。しかし、今回は預金準備率の引き下げと短期金融市場の基準となる金利を引き下げるダイレクトな措置を実行したことになる。
金融市場は好感しポジティブに反応
中国金融市場では人民銀行の発表を受け、中国株が急伸した。CSI300指数は5営業日続伸し、前日比4%高で引けた。このところの上昇で、年初来の高値を回復し、これまでの下げ幅を埋める水準に近づいた。しかし、2021年につけた株価のピークからは40%余り下げた水準にある。緩和をある程度織り込んでいた為替相場では、人民元は対ドルでほぼ横ばい1ドル=7.03人民元水準にある。10年中国国債の利回りは2.03%まで低下し、一時過去最低水準となった。
効果がどこまであるかの見極めが肝心
中国政府は、3月の全人代で『5%前後』の経済成長を達成することを今年の目標として設定したが、春節後の消費は期待に反して伸び悩み、今年5月には、不動産市況のテコ入れのために、広範な景気刺激策を打ち出した。しかし、経済見通しの悪化、景気の停滞感の深刻化、投資家心理の冷え込みにより、中国国内消費は一向に上向ず、中国経済の先行き見通しへの懸念を増大させている。
今回実施された金融緩和策は、金融市場が期待していたよりも大胆かつ、広範囲にわたる。利下げと預金準備率引き下げが同時に発表されたことは、それだけ政府の危機感の裏返しであるとも言えよう。米FRBによる0.50%幅での大幅利下げが実施されたことを受け、人民元安の懸念が薄まったこのタイミングで金融緩和を果断に実施したあたりは、思い切りの良さも感じられる。矢継ぎ早の政策発表により、経済成長が目標近くに回復する可能性はあるだろう。ただ、中国経済に重くのしかかる物価下落圧力を払拭できるほど、十分な効果を挙げられるかは疑問は残る。