中銀預金金利は0.25%幅下げて3.50%へ
欧州中央銀行ECBは9月12日に開催された金融政策理事会で、中銀預金金利を3.75%から3.50%へと0.25%幅引き下げることを決定した。利下げは、今年6月に次いで2回目となる。
ユーロ圏の8月の消費者物価指数は、前年同月比2.2%上昇にとどまり、7月の同2.6%上昇から伸びが鈍化した。これは、2021年半ば以来の低い水準で、インフレ圧力が緩和に向かっていることを示す。コアCPIも同2.8%に鈍化しており、前月の同2.9%から伸び率は低下していた。
ドイツ連邦銀行のナーゲル総裁やシュナーベル理事など、ECB理事会内でも、タカ派の委員が、拙速な金融緩和を警戒する姿勢を維持していた。一方で、ハト派の委員は、ECBの政策スタンスが景気に抑制的に過ぎることに懸念を表明しており、ECB理事会の判断が注目されていた。
追加利下げを見込む市場だが
今回は、ユーロ圏経済の勢いが力強さを欠いており、根強かった物価上昇圧力に緩和傾向が見えてきたことで、ECB理事会が追加利下げの判断に傾いたと考えられる。金融市場は、ECBが12月の理事会で政策金利を再度引き下げた後も、0.25%幅で利下げを実施すること、その後も利下げを継続し、2025年9月までに合計1.00%幅での利下げが行われ、政策金利は2.50%まで低下することを織り込んでいる。
主要リファイナンス金利は0.60%幅の利下げ
なお、今回、中銀預金金利以外の、二つの政策金利である「主要リファイナンス金利」は4.25%から3.65%へ、「オーバーナイト資金の限界貸出金利」は4.50%から3.90%にそれぞれ0.60%幅引き下げられた。
60bpsの利下げはあまり標準的ではないが、これは、預金金利と貸出金利のギャップを調整するためである。三つの政策金利のスプレッドが、拡大した背景はマイナス金利を実施していたためで、中銀預金金利はマイナス圏に引き下げることができだが、他の二つの政策金利は貸出金利であるため、マイナス金利を適用することがテクニカルに不可能だった。
その他に、ECBは、大量に保有する債券や長期貸し付けを縮小し続けている。「パンデミック緊急購入プログラム(PEPP)」の再投資は急速に縮小しており、ECBのバランスシート圧縮は進展している。流動性は減少しており、金融機関がECBからの借り入れファシリティを活用するようになる時期が近く訪れるだろう。その際に、短期金利の変動を最小限に抑えるためにも、今回の金利設定が重要となる。すなわち、ECBはひと足早く「正常化」への備えを打てる段階に来たということになる。これは、政策カードを手元に持って置けるという点でも重要なことである。