7月9日、パウエルFRB議長は、半期に一度の上院・銀行委員会の公聴会で証言した。
パウエル議長は、最近の経済統計が、インフレ面での「さらなる緩やかな進展」を示唆しているとした。しかし、「さらなる良好なデータが見られれば、インフレ率が2%へ持続的に低下しているという確信が強まる」と述べて、インフレ圧力の収束という方向感には近づいているものの、確信を得るには至っていないことを示した。
リスクについては、「政策引き締めの緩和が遅過ぎたり、少な過ぎたりした場合、経済活動と雇用を不当に弱める恐れがある」と金融緩和のタイミングを失することに触れた。一方で、利下げが早過ぎたり、回数が多過ぎたりした場合には、インフレ抑制に失敗するリスクも有ることに言及し、バランスを取った。
雇用市場については「堅調だが過熱してはおらず、バランスを取り戻した」と表現し、最近の雇用統計などのデータからは「雇用市場の過熱感は、かなり冷え込んできたという明確なシグナル」を得られているとの解釈を加えた。
今回の議会証言の内容からは、パウエル議長が金融緩和について、具体的なヒントを与えたわけではない。インフレ圧力との戦いに勝利したとの確信はないが、予想外に堅調さを維持した雇用市場の過熱感は落ち着いてきており、金融引き締めの効果が出てきていると、概ね方向感としては好ましい進展があることを語った。今回の証言を踏まえれば、7月30-31日のFOMC会合で利下げを判断する可能性は低いだろう。
パウエル議長の発言が伝わると、為替市場では、ドル円で円がドルに対して下げ幅を拡大し、一時、1ドル=161円52銭を付けた。短期金融市場では、9月FOMCで初回利下げが実施される確率を70%程度織り込んでいる。そして、2024年内に0.25%の利下げが2回実施されることも織り込んでいる。
なお、パウエル議長は7月10日には下院・金融委員会の公聴会で証言する。内容は、同じものを踏襲すると考えられる。