スターマー首相が就任
4日に英国で投票が行われた下院選挙(下院選・定数650)では、スターマー党首が率いる労働党が412議席を獲得し圧勝し、保守党から労働党に14年ぶりに政権が交代した。労働党は、トニー・ブレア元党首の下で政権を奪還した1997年以来の圧勝でだった。保守党は、過去14年間の政権運営に有権者から厳しい審判が突きつけられた形で、獲得議席はわずか121と過去最低にとどまり惨敗した。ポンドドルは小動きにとどまり、1ポンド=1.2814ドルまで、2ポイント弱の幅で上昇した。
スターマー新首相は、今回の選挙運動中、保守党の「14年間にわたる経済的な失政」を批判し、保守党に対する批判票の受け入れ先となって政権交代を実現した。しかし、低迷する英国経済を立て直す具体的な手段を示せているわけではない。スターマー新首相自身、事態を好転させるには時間がかかることを強調し、「魔法の杖はない」と有権者や周囲には語っている。
国内総生産(GDP)の100%近くに達している政府債務の拡大を抑制するために公共サービスは切り詰められ、インフレの影響と国民の税負担率の高さは家計消費を鈍らせている。住宅も高騰し不足していることは明らかで、企業マインドも冷え込んでしまっている。スターマー新首相には、労働党が圧倒的多数を占めることになる議会を通じて、英国国内の沈滞ムードをどう打破するか、手腕に注目が集まる。
今年の英国経済の成長予測は1%未満となっている。欧州連合(EU)からの離脱後は、パンデミックやエネルギー高騰といったショック要因も重なり、成長戦略が見えてこない。財政状況の困難さも政策の範囲を限定するだろう。先行きの厳しさを考えると、おいそれとポンドを買える水準ではないと思われる。