欧州中央銀行ECBは、先週、政策委員会(4月10~11日開催)の議事要旨を公表した。
議事要旨によると、預金金利を4%に維持する決定については、大半の委員が賛成したが、数人の委員は、「今回の会合で、既に政策金利を引き下げる根拠が揃っている」ことを確信していたことが記されていた。ユーロ圏のインフレ率上昇が、鈍化した一方で、ECBが政策金利を維持したことにより、実質金利が押し上げられた。このため、最後に利上げを実施してからの7カ月間で、金融政策は実質的に、より引き締まっていた可能性を理由として挙げた。
ECBは4月の理事会では金融政策を維持する判断をしたが、これは、「見通しを確認する、あるいはその変化を示唆する証拠を求める」ためであることも記されていた。次回理事会の6月まで待ち、より確かな証拠となるデータを得て、利下げ判断をするとのシナリオをメインシナリオとしているということがここからもわかる。また、地政学的緊張の高まりによるインフレ再燃リスクにも配慮したということも付記されていた。これは、中東地域での緊張が高まっていることで、原油に価格上昇圧力が掛かっていることがリスクとして認識されていることである。
インフレについては、短期的には現水準付近で推移し、その後再び低下するとの予想が示された。2025年半ばまでには、インフレ率が目標である2%水準に収れんするとの見通しを維持した。ユーロ圏経済については、引き続きダウンサイドリスクを大きく見ていることも記された。金融政策は抑制的な水準にあり、その効果が一段と出れば、成長率は下振れする可能性があるとのリスク認識である。さらに、世界経済の後退による需要の鈍化リスクも、ユーロ圏経済の成長に重しとなる可能性がある。引き続き、地政学的リスクも気がかりで、企業部門や家計部門の信頼感を損なうリスクもある。
4月理事会では、賃金やエネルギー価格への上昇圧力がインフレ懸念を再燃させるリスクを理由に、慎重なタカ派の委員もいる一方で、インフレ率は既に目標の2%に十分に近づいており、2024年内に3回程度の利下げを可能だと見ている委員もいることが明らかで、次回6月の理事会は、今回以上に難しい判断を求められることになるだろう。
金融市場の参加者は、6月のECB政策理事会で、利下げを実施するとの見方を強めた。先週末の時点では、年内に25bps(0.25%)の利下げが3回実施されることを織り込んでいる。
ユーロ圏経済については、引き続きダウンサイドリスクを大きく見ていることも記された。金融政策は既に抑制的な水準であり、その効果がでれば、成長率は下振れする可能性があるという。世界経済の後退による需要の鈍化リスクも、ユーロ圏経済の成長に重しとなる。地政学的リスクが企業部門や家計部門の信頼感を損なうリスクもある。