日銀が金融政策据え置きで円安が加速
日本銀行は、4月25-26日に開催した政策決定会合で、無担保コール翌日物金利を0-0.1%程度に誘導するとする現行の政策金利を維持することを判断した。また、長期国債の買い入れに関しては、3月会合で決定した方針を継続するとした。声明文では、国債購入は「これまでとおおむね同程度の金額を継続する」と記されている。
物価見通しは上方修正したものの
日銀が同時に公表した経済・物価情勢の展望(展望リポート)では、消費者物価(生鮮食品を除くコアCPI)の上昇率見通しを、2024年度で2.8%、2025年度では1.9%にそれぞれ上方修正し、新たに示した2026年度も1.9%とした。また、この見通しでは、リスクバランスは2024年度は上振れリスクの方が大きいとも記載した。
2024年の物価見通しが目標の2.0%を超えるとの見通しに上方修正しながら、2025年2026年といった先々の物価見通しは目標以下に収まると説明することは、説得力に欠けるのではないか。また、過去24カ月間、物価は目標である2.0%の上昇を超えて推移していることも、重視すべきではないか。基調的な物価上昇率が上昇していくことに、まだ自信が持てないということかもしれないが、これだけの材料がありながら、「緩和的な金融環境が継続すると考えている」超ハト派のスタンスを維持することにも、不信感が残る。
政策決定会合の結果発表を受けて、為替市場ではドル円相場で1ドル=156円台へとドルが上昇し、1990年5月以来の円の安値を更新した。また、26日のニューヨーク時間では、米国の利下げ観測が一段と後退し、円売り・ドル買い圧力が拡大、1ドル=158円30銭台で取引を終えた。29日東京時間の取引で、円相場は対ドルでさらに下落し、一時1ドル=160円台を付けた。
日本政府は、ドル売り介入を示唆しているが、152円、155円と節目とされる水準を超えても、何も行動を起こせていない。G20で主要国間の協調を演出しながらも、欧米通貨当局の為替介入への冷ややかな見方は明らかであり、日本政府は単独介入が失敗した際に、更に円安が進行することを恐れて、自縄自縛になっているのではないか?
円相場は、グリップを失っており、1ドル=160円という相場展開になったしまったことも驚きではない。セリングクライマックスまでは、まだ距離感がある。安全通貨と言われた日本円の凋落が懸念される。