主要不動産開発業者の資金繰り支援
中国政府が打ち出した主要不動産開発会社への資金調達支援策は、一定の評価はされているものの、すぐさま不動産市況の悪化に歯止めをかけるとも予想しがたい。主要不動産開発業者に、資金繰り支援を行うことで、着手した開発を完成させ、買い手に住宅を供給させることが、今後の不動産市場の回復への道すじとの考え方は、正しいことではあるが、時間軸は長くなろう。ダイレクトに不動産開発業者を救済する手段に、中国政府が踏み込んだことは評価すべきだが、即効性の大きなものではない。
銀行セクターには負担増
また、不動産開発業者への資金繰り支援は、中国の銀行システムを弱体化させるとの指摘も多い。中国の市中銀行は、不良債権の急増や過去最低水準の預貸利ざやで経営環境が悪化しており、今回の債務不履行状況にある不動産開発業者への支援策は、さらなる難題を抱えさせられる形となることが指摘される。
工商銀など主要11銀行は2024年に不動産の不良債権でさらに引当金890億ドル(約13.2兆円)程度積み増さなければならないとの試算も出ている。これは、来年見込まれる引き当て前利益の21%に相当するという。また、市中銀行は、業績目標の下方修正や人員削減を検討しているといわれ、これも消費の冷え込みや失業率の増加に繋がることが懸念される。
今、長い目で見ろという時なのか?
中国人民銀行の潘功勝総裁は先週28日、香港金融管理局(HKMA)と国際決済銀行(BIS)が共催した会合で講演した。中国政府が、不動産やインフラ投資から、再生可能エネルギーなどの成長分野や国内消費へと経済活動の原動力へと移行する中で、短期的に成長が減速することに対して寛容であるべきだと述べた。潘総裁は、2024年以降も中国経済が、健全で持続可能な成長を享受できることを確信していると述べたが、不動産や地方政府の債務問題については、特段の懸念を言及しなかった。潘総裁は、現在は、インフラや不動産に依存する従来型の成長モデルから脱却する構造調整の期間であると位置づけ、持続可能性ある経済成長を取り戻すうえで、歩むべき道だと語った。ただ、中国経済が直面する課題からは、即効性のある政策を発動するしかないのではないか。