ECBは、ユーロ圏の統一的な金融政策を担う中央銀行です。1998年6月1日に設立されました。ユーロを採用する国々における金融政策を策定し実施する他、ユーロの発行・管理、為替操作の実施、加盟国の公的外貨準備の管理、決済制度の円滑な運営・促進などを担っています。最大の使命は、ユーロ圏域内の物価安定を図ることと規定されています。そのため、政治的介入を受けず、独立性を維持するよう、制度設計されています。
ユーロという欧州統一通貨は、これまでの通貨概念と異なり、国家の枠を超えた挑戦的な取り組みです。ユーロ圏各国には、引き続き中央銀行が存在し、機能しています。ECBは、それを束ね、国家という枠を超えて、金融政策を遂行する欧州中央銀行制度(ESCB)の中核組織と位置付けられています。ある意味では、米国の地区連銀と連邦準備銀行(FRB)に類似しています(ただ、米国のFRBは国家の枠を超えていない)。
ECBの意思決定は、最高意思決定機関である政策理事会で行われます。金融政策に関する会合は、6週間に1度開催されています。理事会のメンバーは、総裁・副総裁・理事(4人)・ユーロ圏各国の中央銀行総裁(19人)ですが、意思決定には、輪番制が導入されています。投票権は輪番で回ってくる方式が採用され、独仏などの経済大国は採決に参加できる頻度が小国よりも高まるよう設計されています。会合後には総裁の会見が開かれ、議事要旨も後日公表されます。
新型コロナウイルスの感染拡大により、経済が壊滅的な影響を受けた2020年3月には、米国FRB同様に、大規模な金融緩和政策を実施して、経済の支援を前面に打ち出しました。今後の経済回復局面では、使命であるインフレの抑制と経済成長支援をどうバランスさせるのか、手腕が問われるところです。