中国不動産業の苦境続く

中国恒大はついに一部デフォルトに

中国恒大集団発行のドル建て債券は、12月6日に利払いの支払い猶予期間を終了し、その不履行によって、債務不履行状態となった。フィッチ・レーティングスは、中国恒大の長期発行体デフォルト格付けを、これまでの「C」から「一部債務不履行(RD)」に引き下げた。

中国恒大は、3日に、オフショアの債権者とも再編計画について「積極的」に協議する計画だとコメントし、公募・私募によらず、全てのオフショア債を再編計画に含める姿勢を示した。ただ、総額3,000億ドル(約34兆円)の負債の前には、返済能力は及ばないばかりか、従来から指摘してきたとおり、中国当局主導で進む、国内の個人投資家を優先した実質的な破綻処理のプロセスでは、オフショア・ドル建て債の保有者は大幅な債務減免を迫られそうである。

中国当局にとっては、中国恒大の破綻処理は、粛々と進めるべきものに過ぎず、一不動産開発会社の消滅自体は、気に留めてはいないようである。一方で、中国恒大の債務問題処理のプロセスに長い時間を要するようであれば、債権者は、資金回収に動き出すだろう。そうした動きは、他の不動産業者にも波及し、債務危機を表面化させ、それが流動性を奪って、経済全体に広がるシナリオが懸念される。

こうした懸念は広がりやすい状況である。フィッチは、不動産開発会社の佳兆業についても、信用格付けを「CCC-」から「RD」へと引き下げた。広東省に本社を置く中国奥園集団も、近く支払期限を迎える債務について、流動性逼迫を理由に履行できる保証はないと説明した。不動産業者の流動性の悪化は続いている。

過去に販売した理財商品などの債務に不透明な部分を抱える業者は少なからずあるうえ、不動産の販売は減少傾向にあり、返済能力が低下している。信用リスクには敏感にならざるを得ない中で、住宅販売や資産処分による返済が進むかどうかは綱渡りである。

人民銀行が準備率を引き下げ

中国当局の動きでは、12月6日に、中国人民銀行が、預金準備率の0.5ポイント引き下げを発表した。今年2度目となる引き下げで、実施は12月15日からだが、約1.2兆元の流動性が市場に供給されることになる。李克強首相は、先週、中小企業の資金繰りを支援するために、適切な時期に預金準備率を引き下げると述べていたが、それをさっそく実行したことになる。

人民銀行は、今回の準備率の引き下げについて「定期的な金融政策行動」に過ぎず、「経済を金融緩和であふれさせることはしない」とコメントして、この引き下げが金融緩和姿勢局面の始まりと受け止められることに不快感を示した。李首相の発言後、金融緩和観測が広がったことへの嫌悪感だろう。ただ、間接的な策ではあるが、市場の動揺を未然に防ごうとして先手を打ったことは間違いない。

中国の不動産業が抱える過剰債務問題は、引き続きリスクファクターとして注意しておかなければならないだろう。