米国のインフレ状況は総じて改善も、リスクシナリオも存在
7月の米消費者物価指数(CPI)は、食品とエネルギーを除くコア指数で、前月比0.2%上昇にとどまり、前月6月に続いて価格上昇率に頭打ち感がみられた。前年同月比では4.7%上昇と、6月の同4.8%上昇を下回っており、2022年9月に同6.6%を付けて以降は鈍化傾向にあり、過去2年間で、物価の伸びは最低水準となった。ただ、FRBが目標とするコア指数の伸びは2.0%上昇であることも忘れてはならない。このところ注目を集めている、住宅とエネルギーを除いたサービス価格は、前月比0.2%上昇、前年同月比では4.1%上昇となった。サービスコストはほぼ1年ぶりの大幅な上昇で、6月からは伸びが加速しており、これも気になるところである。
7月の生産者物価指数(PPI)は、食品とエネルギーを除くコアPPIは前月比0.3%上昇、前年同月比では2.4%上昇と伸びが加速した。今年に入って、消費者の需要が財からサービスへとシフトしており、財の価格は、サプライチェーン復旧や中国での消費需要低迷から、上昇圧力が緩和する方向にあった。しかし、このところ、下げ止まりから反転上昇の兆しもある。食品価格は、2022年11月以来の大幅上昇となった。また、原油価格も1バレル=80ドルにのせてきており、潮目の変化となる可能性には注意しておくべきだろう。
9月FOMC会合では、政策金利を据え置く可能性が高まったかもしれない。もちろん、個人消費支出(PCE)など、他の重要指標も含めて検討されることになるが、7月の物価統計は、物価上昇圧力が緩和に向かっている可能性を示唆している。FRBにとっては、さらなる金利引き上げを迫られず、インフレを沈静化させられるシナリオの可能性が高まれば、リセッションを回避できる可能性を高められる。
しかし、これでFOMCの金融政策スタンスが、変わるとは考えにくい。当面は、タカ派的な姿勢を維持し、7月物価状況が踊り場的な動きなのか、上昇圧力緩和への動きなのかを見極めることになるだろう。
消費動向は足取り弱い
米ミシガン大学が調査する8月の消費者信頼感指数は、速報値で71.2だった。前月の71.6からは低下した。現況指数は77.4で2021年10月以来の高い水準となった。しかし、期待指数は67.3に低下した。消費者マインド指数は、パンデミック前の水準を回復しておらず、消費動向は総じて横ばいで、まだら模様というべきだろう。ただ、米国がリセッションに陥らず、ゴルディロックス的なシナリオへの期待が強まっていることを示している。
1年先のインフレ期待は、3.3%に低下した。市場の事前予想に反して低下したことにはやや意外感がある。5-10年先のインフレ期待も2.9%に低下した。消費者の間でインフレが短期、長期ともに減速し続けるとの見通しを強めていることは、消費にとっては良いことであろう。