香港・中国市場Dairy ~ 欧米の高官によるタカ派的発言が相次ぎ、株式市場のモメンタム悪化が続く
ハンセン指数 19,954.39 pt (+0.03%)
中国本土株指数 6,865.12 pt (+0.36%)
レッドチップ指数 3,704.41 pt (▲0.21%)
売買代金1,365億5百万HK$(前日961億4万HK$)
前日、米国や欧州の中央銀行高官からタカ派発言が相次ぎ、昨日に続いてセンチメントは悪化した。政策金利の動向に敏感な2年米国債利回りは3.49%台を突破、短期金利の上昇が顕著にみられ、金利高の影響で米国主要3指数はそろって3日続落、1ヶ月ぶりの安値となった。
ウィリアムズ米ニューヨーク連銀総裁が、金融引き締めを来年まで継続する必要があるとの認識を示したことや、欧州中央銀行(ECB)理事会のミュラー・エストニア中銀総裁が9月の理事会で75bpsの利上げを選択肢に含めるべきだと述べたことが、大幅利上げによる欧米の景気減速につながるとの警戒が強まった。投資家心理は原油価格にも影響がみられ、米WTI原油先物は前日比5%強まで売り込まれるなど景気先行き懸念が広がった格好となった。
31日のアジア市場は連日の米株安を受け、マイナス圏での取引開始となった。香港ハンセン指数は朝方、2%近く下げて売られる場面もみられたが、サポートラインとなる20,000pt付近は底堅い動きとなった。午後から相場は切り返し、安値から3%超上昇する場面もみられ、ハンセン指数は前日比0.03%高と3日ぶりに小幅に反発した。取引時間中に発表された中国PMIが製造業・非製造業ともに市場予想を上回るなど投資家心理を支えた。
31日の香港市場は買い戻し優勢となり、ハイテク銘柄中心に買われた。世界経済の減速懸念が強まる中、中国共産党が第20回党大会を10月16日から開催すると伝わったことで、中国が景気刺激策を支援するとの期待が高まった面もあった。ハンセンテック指数は1.09%高と市場をアウトパフォーム。人工知能開発のセンスタイム(0020)は6.9%高、インターネット保険の衆安在線財産保険(6060)は4.7%高、オンラインゲーム事業の金山軟件(3888)は3.8%高となった。
消費関連銘柄も買い戻され、火鍋チェーンの海底撈國際(6862)は6.5%高、スポーツ用品の李寧(2331)は3.8%高、カジノ経営のサンズ・チャイナ(1928)は2.9%高、フードデリバリーの美団(3690)は2.5%高となった。
一方、原油安を受けてエネルギー関連株が下落。石油販売の中国海洋石油(0883)は2.2%安、ペトロチャイナ(0857)は1.8%安、シノペック(0386)は1.0%安となった。
個別では自動車・電池メーカーの比亜迪(1211)は7.9%安。米著名投資家ウォーレン・バフェット氏が率いる投資会社バークシャー・ハサウェイが14年前に取得した同社株の一部を売却したことがネガティブに働いた。8月24日時点で、保有する株式のうち133万1,000株を売却し、持ち株比率は20.04%から19.92%に低下した。前月11日にバークシャーの全持ち分に相当する株式が香港の清算決済システムに登録されて以降、保有株式を全て売却するのではないかとの観測が浮上していたため、懸念が強まった。
中国本土市場は上海総合指数が前日比0.78%安の3,202.14と続落した。同指数は一時3,200ptを割り込むも、中国当局の政策支援の期待が下値を支えプラス圏に浮上する場面もみられた。ただ中国人民元安も相場の重荷となり、大引けにかけて下げ幅を広げた。
足元の新型コロナウイルス感染抑制策の導入もネガティブに働いた。広東省広州市は31日、深圳市に続き行動規制が実施された。これで中国南部の2つの大都市に制限が課されることになり、経済への不透明感が強まった。
中国人民銀行は31日、人民元の対ドル基準値を2年ぶりの安値水準となる1ドル=6.8906元に設定した。前日の基準値より0.15%元安の水準であり、6営業日連続で実勢より乖離した為替レートで元高に設定するも、急ピッチな元安が続き心理的な節目である1ドル=7.00元も視野に入る流れとなった。人民銀は急ピッチでの元安進行を嫌っており、6.90元はいったん歯止めとなるのではないかとの見方もあるが、7.00元を上抜けると更なる動きも懸念され、中国当局の対応に注視したいところ。
中国PMIが発表
中国国家統計局が31日発表した8月の製造業購買担当者指数(PMI)は49.4と市場予想(49.2)、前月(49.0)を上回るも前月に続いて節目の50割れとなった。建設業とサービス業を対象とする8月の非製造業PMIは52.6、市場予想(52.3)を上回った。8月は中国各地で厳格な新型コロナウイルス対策が続いていることに加え、猛暑の影響で電力不足が深刻化したことも受け、中国の景気には回復の勢いがみられないことが要因となった。
ただ8月下旬に入って猛暑と水不足が直撃した四川省を中心に電力不足が緩和されたほか、10月の中国共産党大会も控え、閉幕後には新型コロナウイルスの対策緩和や、経済対策の裁量拡大が期待できるとの期待も高い。足元の懸念は何よりゼロコロナ政策の影響で再び都市規制による経済打撃が懸念感を強めている中、楽観視は厳しい局面が続く。