資産額はピークから半分以下に
スペースXとテスラの株価下落が、両社を率いるイーロン・マスク氏の資産額を大きく押し下げている。背景にあるのは、成長期待の高さと、足元の収益実態とのずれだ。スペースXでは上場直後の過熱感が反動を招き、テスラでは売上拡大の一方で利益率の低下が嫌気されている。
米フォーブス誌の集計によると、7月27日時点のマスク氏の資産規模は6,950億ドルとなった。6月16日にスペースX株の急騰を背景に記録した1兆4,500億ドルからは、半分にも満たない水準である。
スペースX:上場後の過熱感が反動に
資産減少の最大の要因は、スペースX株の急落だ。同社は6月12日にナスダックへ上場し、公開価格は1株135ドル、初値は150ドル、初日の終値は160ドル台となった。上場直後には一時225.64ドルまで買われたが、7月下旬には110ドル台まで下落し、高値からの下落率は約5割に達した。
スペースXの業績は、成長力と不安材料が同居している。2025年通期の売上高は約186億ドルと増加し、衛星通信サービス「スターリンク」を含むコネクティビティ部門は約114億ドルの売上高と約44億ドルの営業利益を稼いだ。一方で、スターシップ開発、AI関連投資、xAI統合などの負担が重く、連結では約49億ドルの純損失を計上した。
特に、黒字を支える事業がスターリンクに偏っている点はリスクとして意識されている。さらに、スターシップの試験飛行でスーパーヘビーブースターのエンジン再点火が失敗したことも、長期成長シナリオへの不安を強めた。8月4日に予定される上場後初の四半期業績発表と、その後の内部者保有株式の売却解禁も、投資家の警戒材料となっている。
テスラ:売上は伸びるも利益率が低下
テスラの株価下落も、マスク氏の資産減少に拍車をかけた。2026年4-6月期決算では、売上高が前年同期比26%増の282億4,000万ドルと市場予想を上回った。自動車部門の売上高は205億2,000万ドル、エネルギー部門は31億4,000万ドル、サービス・その他部門は45億8,000万ドルとなり、事業規模の拡大は確認された。
しかし、利益面では市場の期待に届かなかった。調整後1株利益は33セントにとどまり、アナリスト予想の51セント前後を下回った。純利益は前年同期比5%減の11億ドル、営業利益は57%減の4億ドルとなり、営業利益率は1.4%まで低下した。
背景には、価格競争による平均販売価格の低下に加え、AI、ロボタクシー、ヒューマノイドロボット「オプティマス」への先行投資がある。販売台数は48万126台と前年同期比25%増えたものの、費用増加が利益を圧迫し、売上増が十分な収益拡大につながらなかった。
市場が問う「利益化の時期」
今回の株価急落は、スペースXとテスラに共通する「成長期待と収益実態のずれ」が表面化したものといえる。市場はマスク氏の長期構想を否定しているわけではない。ただ、短期的には、巨額投資がいつ利益につながるのかをより厳しく見極めようとしている。今後は、スペースXの初決算、スターシップ計画の進展、テスラのAI・ロボタクシー事業の収益化が、株価回復の焦点となる。