米とイランは和平交渉を継続も、イスラエルが従うか?
6月20日、パキスタン外務省は、米とイランの最終合意に向けた協議が21日からスイス中部ビュルゲンシュトックで開催されると公表した。パキスタンとカタールが仲介し、イラン側からはガリバフ国会議長、アラグチ外相のほか、安全保障、中央銀行、石油部門の政府高官で構成される代表団が参加する見込み。イラン国営メディアによると、イラン協議団は、20日にスイスに到着した。米側からはバンス副大統領が参加する予定で、ワシントン郊外のアンドルーズ統合基地からスイスへ向け出発した。既に現地入りしているウィットコフ中東担当特使とトランプ大統領の娘婿クシュナー氏と合流する。
一方、イランのイスラム革命防衛隊は、イスラエルがレバノン攻撃を継続していることに反発してホルムズ海峡を再封鎖すると宣言した。イラン交渉団も、和平協議では、暫定合意した事項の履行を強く求めると述べた。
17日にトランプ大統領によって正式署名された暫定合意の覚書では、米国がイラン周辺の海上封鎖を解除し、イランはホルムズ海峡の商船の安全かつ無償の航行を60日間確保するとの内容が織り込まれていた。特に、レバノンを含む「全ての戦線」での停戦という覚書の冒頭の第1項の約束を米国が履行していないことにイラン側は反発している。
他方で、米中央軍は、20日に商船55隻がホルムズ海峡を通過し、大量の貨物や1,700万バレル以上の石油が輸送されたと発表し、米軍は船舶の航行継続を確保すると表明した。
レバノンでは、19日の停戦発効後の20日にも、イスラエル軍は20日、ヒズボラの拠点があるレバノン南部とベカア高原を攻撃し、20人が死亡したと報じられた。ヒズボラはイスラエルにレバノンでの「行動の自由」を許さないと表明した。イスラエルは、米国とイランの和平合意の当事者ではないとの立場を明確にし、レバノンでイスラエル軍が制圧した地域で軍を駐留させ続けるとしている。また、イスラエル軍当局者は、ヒズボラが夜間にレバノン南部のイスラエル部隊に向けて50発以上の飛翔体を発射したため、応戦のためにヒズボラの標的を攻撃したと説明した。イスラエルは停戦を順守しており、イスラエルやその部隊に対するいかなる脅威に対しても引き続き行動すると声明で表明した。
ウォーシュFRB議長が新たな方針を発表 ~ 6月FOMC
6月FOMCは、ケビン・ウォーシュ新FRB議長が取り仕切る初の会合となった。今回の会合では政策金利が据え置かれたが、FRBの運営やその考え方が変わることになるだろう。
ウォーシュ議長はFOMC声明文を大幅に簡略化し、金利見通しに関するいわゆる「フォワードガイダンス」を削除した。また、経済や金利見通しを示すドットチャートの投票にも参加しなかった。さらに記者会見では、FRB改革のために5分野のタスクフォースを設置することを発表した。前FRB議長のパウエル氏も理事としてFOMCに参加する中、ウォーシュ議長は、初回となるFOMC会合から大幅な変革に手を付けた形となった。
今後のFRBの運営がどうなるか、今までとどう異なってくるかは、具体的にはまだ見えてこないが、物価安定を果たすことと雇用を最大化すること、そして金融政策を誤ることなく運営することにコミットすることを強調した。利下げを指向するトランプ政権の下、トランプ大統領に指名されたFRB議長として、どこまで、役割を果たし、金融市場の信頼を獲得できるのか、興味深いところである。
スターマー英首相が退陣か?
一部英国の報道によると、スターマー英首相は週明け22日にも辞任を表明し、退陣に向けた日程を示す見通しと報じた。英政府筋は、スターマー首相が引き続き職務遂行に専念していると述べ、報道内容を否定した。スターマー首相も、19日の段階では、首相降ろしの工作に抗うと表明しており、与党内の内輪揉めで、党を分裂させないよう呼びかけた。
スターマー首相は、先週後半に、閣僚や顧問、支持者、労働組合幹部らと相次いで協議したが、首相の職務を続けることはできないとの結論に達したという。最終決定を下す前に、公式別荘で退陣について妻と協議しているが、与党・労働党の幹部らは週明けにも同氏の去就について明確な声明が出されると予想しているという。
与党労働党の下院議員の約4分の1に相当する100人余りの議員が、スターマー首相に辞任ないし退陣の日程を示すよう求めている。
金融市場見通し 6月22日週
<米国債券>
米国とイランの和平協議の枠組みは、何とか維持される模様だが、イスラエルは米国でさえコントロールできていないことが先週よりはっきりしてきた。先週末には、和平成立への期待感から原油価格が大幅に低下、債券市場への資金回帰も見られたが、この流れが続くかどうかは、予断を許さない。
供給制約やエネルギー価格高騰などにより物価上昇圧力は、当面続くことが予想され、金融市場の大勢は、インフレ圧力の緩和には時間を要するとの見方に傾いている。そのため、6月FOMCでは、FRBが今後、金融引き締めスタンスを採り、インフレ抑制に焦点をあてることが確認されたと解釈される。短期中期債券の利回りが上昇したことは、金融市場が、FRBの次のアクションを「利上げ」と見ていることや、年内にはそれが起こりうることを物語る。
先週、2年米国債利回りは前週末の4.077%から4.18%へと上昇した。10年米国債利回りは4.479%から4.45%へと低下し、2年債と10年債の利回りで動きが食い違う現象が起こった。
6月FOMCでは、予想通り金融政策には変更がなかった。しかし、雇用市場が堅調に推移する中、インフレ率が目標の2%水準を大きく上回っている現状を踏まえ、FOMC声明から緩和バイアスが削除された。雇用市場は完全雇用に近い状態にあり、インフレ圧力を抑制するため、FRBは近く利上げを実施する必要に迫られる可能性が高まるだろう。金融政策の方向性は、FRBが金融政策においてタカ派的な姿勢を維持せざるを得ない。しかし、それはトランプ政権の期待とは真逆になる。
<米国株式市場>
先週の米国株式市場は、地政学リスク、FOMC、重要経済指標など重要イベントを無難にこなし、金利動向がやや落ち着いたこともあって、堅調な展開となった。引き続きハイテク株を中心にして、参加者の株買い意欲は根強い一方で、利上げ観測の浮上などのマクロリスクには警戒が必要だろう。
雇用市場は底堅いため、FRBの早期利下げ観測は6月に入って大幅に後退し、2026年内の利上げ可能性が織り込まれる相場展開となっている。利上げに敏感なハイテク株やグロース株は、本来調整しやすい状況にあるといえ、注意が必要だろう。これに、インフレと原油価格が振れやすいことは大きなリスクとなる。
とはいえ、企業業績の拡大基調は続いており、これによる下支え効果は大きい。 AI・ハイテク株への投資は非常に活発であり、AI向け半導体やクラウド、データセンター関連が市場の中心となる分野で、構造的成長期待は、同セクターを支えるだろう。
高バリュエーション環境下でも株価上昇の根拠となっている。EPS(1株あたり利益)の上方修正が続くが、S&P500全体で前年比+15.5%、情報技術セクターは+30.4%と高成長が見込まれている。
<為替市場>
為替市場では、米ドルが前週の下落分をほぼ取り戻して上昇した。米・イランの和平合意成立への期待とFRBによる金融引き締めへのシフトを背景として米ドルが主要通貨に対して全面高となった。ECBと日銀の利上げは、ユーロ・日本円共に支援材料とはならなかった。特に、ドル円では、ドル高円安の基調が継続するとの観測が増えている。
6月の米連邦公開市場委員会では金利が据え置かれたが、今後の金融政策は、緩和より引締めとみる参加者が増えており、金利の先高観は強まった。FOMC後のウォーシュ議長のコメントも、インフレを警戒する姿勢が滲んでおり、「タカ派」色が印象付けられた。
経済指標では、米PCE価格指数で、医療費上昇や航空運賃高騰を受けコアPCEの伸びが加速すると予想されていること、米個人所得支出も前月比で増加した可能性が警戒されている。東京都の消費者物価指数は、水道や燃料の価格上昇で伸びが加速することが懸念されている。
ドル円は1ドル=160円を超える水準を維持し、1ドル=161円までじり高となった。引き続き160円を超えた水準での日本通貨当局による円買い介入への警戒感は強いが、介入だけでは円安圧力は解消できないとの厳しい見方もあり、当局の出方が注目されよう。
