堅調ながらペースダウンの兆しも
12月6日、米国労働省は11月の雇用統計を発表した。
非農業部門雇用者数は11月に前月比22.7万人増加した。前月10月は、速報値の1.2万人増から3.6万人増に上方修正された。10月の統計では、非農業部門雇用者数の増加幅が著しく減少していたが、これはハリケーンと大規模ストの影響であり、11月には前月比20万人程度の増加が予想されていた。
一方、家計調査に基づく11月の失業率は4.2%と上昇した。これに加えて長期失業を示す指標も3年ぶりに高い水準をつけ、雇用市場が冷え込み始めた兆しも示された。平均時給は前月比0.4%増、前年同月比では4%増でこの3ヶ月間変わっていない。
総じて見ると、雇用市場は悪化というほどではないものの、やや減速傾向にあると考えられる。また、賃金上昇が物価上昇の要因になり得ると危惧された状況は、改善に向かっており、むしろ雇用にはダウンサイドのリスクのほうがあると判断できる。
トランプ第2次政権の政策によるブレもありうる
ただ、雇用市場の動向を判断するには、複雑な要因を加味する必要がある。トランプ第二次政権では、大統領の経済政策がどのように展開されるかは不透明なままである。特に不法移民の大量国外退去や懲罰的関税の導入は、雇用環境に大きく影響する可能性が高い。また、連邦政府の業務や人員の削減も打ち出しており、政府機関による雇用機会の増減は、全体の雇用に影響を与える可能性がある。
12月FOMCでの利下げを織り込みも
金融市場では、今月17~18両日で開催される連邦公開市場委員会(FOMC)会合では0.25%幅での追加利下げが行われるとの見方が強まり、為替市場では、米ドルインデックスが下落、日本円は対ドルで買われ、一時1ドル=149円30銭台に上昇した。ただ、円は統計発表直後は149円90銭台まで上昇して、先週の取引を終えた。
12月FOMC会合までには、インフレ動向を示す、消費者物価指数CPIや生産者物価指数PPIの発表が予定されている。ホリデーシーズン渦中の小売売上高の動向も気になるところである。