財政政策のおさえとなるか?
財務長官にベッセント氏
トランプ次期大統領は、財務長官に著名投資家のスコット・ベッセント氏を指名すると発表した。債券市場では、大統領選挙の結果判明以来、低迷していた米国債市場が立ち直るきっかけになるかどうかが注目を集めている。
きっかけは、トランプ次期政権が、財政赤字を急増させるような政策を取ることへの懸念だった。この懸念が増幅して、米国債市場は売りこまれ、10年米国債利回りは5カ月ぶりの今年最も高い水準にある。
さらに先週は、財務長官人事をめぐる不透明感も売りに拍車をかけた。トランプ氏が非常に孤立主義的な人物や好ましくない人物、あるいは関税引き上げを支持する人物を選ぶのではないか、といった不安が先行していた。しかし、22日に財務長官人事を発表し、金融市場は、胸を撫で下ろすのではないか。
ちなみに、ベッセント氏は、米紙への最近の寄稿で、銀行融資とエネルギー生産の促進に向けた規制緩和や税制改革を提唱し 、財政規律にも言及している。極端な関税引き上げや貿易戦争の可能性が後退することが期待できるのではないか。
また、米国債市場では、米連邦準備理事会の独立性に関する次期政権の見解にも注目している。トランプ氏は8月に、大統領がFRBの決定について「発言権」を持つべきだと主張した。しかし、市場はFRBが独立を保つことが債券市場にとって良いことだと考えている。この点を、ベッセント氏がどう触れるのかも気になるところであろう。
25日の米國金融市場では米国債が大幅高、株価もダウ平均は新高値を更新した。ベッセント氏の次期米財務長官への起用が発表されたことを好感したベッセントラリーともいえる上昇だった。ベッセント氏はウォール街のベテランであり、金融市場ではトランプ次期政権の貿易・経済政策をより穏やかな方向に導くとの見方が広がった。ただ、同日に、トランプ氏は、中国に10%の追加関税、カナダとメキシコに25%の関税をかけると吠えた。予見不可能性は相変わらずである。果たしてどうなるやら。