11月総合購買担当者景気指数PMI
ユーロ圏経済の停滞感再び
S&Pグローバルが11月22日に発表した11月のユーロ圏総合購買担当者指数PMIは速報値で48.1と10月の50.0から低下し、活動拡大・縮小の境目となる50を下回った。特に新規受注と受注残がいずれも減少したことや、サービス部門で指数が大きく悪化したことが主な要因で、前月と同水準を維持するとの事前予想が大半を締めていた金融市場では、大きなサプライズとして受け止められた。PMIがこれほど悪化した背景には、欧州経済の先行き見通しへの懸念が深まっていることがある。ドイツでは連立政権が崩壊し、フランスでは与党の政権基盤は脆弱化し財政問題を抱えている。また、トランプ氏の復権で関税引き上げが視野に入るなど、欧州経済を脅やかす要因も増えている。
ユーロ圏経済は第3四半期は比較的好調で、域内総生産が予想を上回り、ECBが12月に大幅な利下げを行うとの見方は後退していた。しかし、今回のPMIが弱い内容だったことで、利下げ観測は再燃している。9月も同様に、PMI速報値が予想以上に弱かったことがECBの背中を押し、追加利下げが実施された。
新規受注と受注残がいずれも減少し、10月よりも減少ペースが加速したように見えることから、消費は直ぐに回復するとは期待できない。インフレが低下し賃金は上昇していることから、消費は回復軌道に乗せやすいはずなのだが、相変わらず低調である理由は、危機意識が強まっていることもあるだろう。
ユーロ圏の製造業は深刻な不況に陥り始めている可能性があり、、サービス業も夏場2カ月間のわずかな成長の後は、苦戦を強いられている。第4四半期は、ユーロ圏経済の成長率がゼロか減少に転じることも懸念される。
経済見通しの悪化を受けて、ECBは緩和ペースを速めるかどうかの選択を迫られることになるだろう。金融市場では、ECBの大幅利下げ観測強まり、これがユーロ売りを誘発した。ユーロは対ドルで急落し、一時1ユーロ=1.0335ドルと、2022年11月以来の安値をつけた。トランプ次期政権の減税公約で、今後、成長加速するシナリオさえ織り込んでいる米国に対しては、劣勢との見方は強まるだろう。
英国も企業活動が縮小傾向
また、続いて発表された英国の11月総合PMIも予想を下回った。PMIは速報値で49.9とわずかながらも50.0を下回った。リーブス財務相が発表した予算案で、雇用主の負担増が打ち出されたことも手伝って、企業の景況感が低下した。企業の1年先の活動への期待も、2022年以来の低さを示し、先行き見通しが悪化した。
米国PMIは堅調に推移
これに対して、11月の米総合購買担当者景気指数PMIは速報値で55.3と、2022年4月以来31カ月ぶりの高水準に達した。10月の54.1からも改善した。金利が低下して、更に低下観測が根強いことや、トランプ次期政権が景気刺激的な政策に軸足を置くことが予想され、また、企業優遇策への期待が強まっていることが、PMIを押上げている。
第4四半期には、更に経済成長が加速する兆候もあり、金利低下見通しと次期政権の企業寄りの姿勢によって楽観論が高まっている。11月の生産と受注は増加しており、新規受注は54.9と10月の52.8から上昇した。製造業PMIは48.8と前月の48. 5から上昇した。サービス業PMIは57.0で、前月の55.0から上昇して、2022年3月以来の高い水準をつけた。一方、雇用はほぼ変わらずの49. 0だった。製造業での雇用が回復している半面、サービス部門では減少が続いており、まちまちと言えるだろう。