予想を上回って堅調だった小売売上高
11月15日に発表された10月の米小売売上高は、前月比0.4%増加と事前予想を上回った。9月小売売上高も速報値の同0.4%増から同0.8%増に上方修正された。ただ、8月分は同0.1%減へと下方修正された。
内容を見ていくと、電子機器や家電の販売店が好調だったことや、自動車販売が3カ月ぶりの大幅増となったことが増加の要因と見られる。また、ホリデーシーズンの商戦を前にいくつかのカテゴリーで、勢いが加速した。アマゾン・ドット・コムによる「プライムデー」での値引きや、ウォルマート、ターゲットが実施した販促キャンペーンが影響したこともあるだろう。電子商取引を含む無店舗小売りは伸びが鈍化した。13分野のうち8分野が増加した。
全米小売業協会(NRF)が10月に公表した、今年のホリデーシーズン期間の小売売上高予想は、前年同期比2.5~3.5%増の9,795億~9,890億ドルになるというものだった。2023年の年末商戦の小売売上高を上回る予想だが、伸び率は2023年の伸び率、前年同期比3.9%を下回って、2018年以降で最も小幅な伸びにとどまるというものだった。小売売上高の中で伸びが目立つと予想された、電子商取引でのネット販売は、前年同期比8~9%増の2,951億~2,979億ドルと見込まれているが、ここへ来て伸びが顕著でないことは気がかりである。
数字ほど好調ではない可能性も
10月はコア売上高は0.1%減少だった。9月に大幅増だった反動だろう。過去3カ月の年率では前年同期比4.6%増となっており、第4四半期も米國経済の滑り出しは順調だったことを示唆している。所得の伸びと個人への与信は、引き続き個人消費を支えている。
しかし、小売売上高のデータはインフレ調整をしないため、売上高の増加が必ずしも販売の増加を意味しない。価格が上昇した影響のほうが多い場合もある。その場合、10月の小売データは、強い内容というより、強弱が入り混じる結果だったというべきではないか?確かに、9月分が上方修正されたことで、今年終盤の個人消費の予想は、強気に傾き、これまで予想されていたよりも底堅いとの見方も広がった。一方で、トランプ次期政権下で輸入品への関税を引き上げる政策が取られることへの懸念から、商品の値上げを検討する動きもあり、売上に影響を及ぼす可能性がある。ホリデーシーズンの売上は、まだ予断を許さないという見方も出来よう。
12月FOMCでの利下げ実施は微妙か?
先週発表された物価統計と合わせてみると、インフレの根強さが示唆されており、消費が堅調である状況が確認される中、米FRBは12月FOMCで追加利下げを判断することには、慎重にならざるを得ないとの見方を強める。このため、短期金融市場が織り込む、12月FOMCでの利下げ確率は、ほぼ50%程度に縮小した。判断は、11月雇用統計の内容に委ねられることになろう。