議会の多数も共和党が握る
先週、ドナルド・トランプ氏が大統領選に勝利したことが伝わると、米国債市場では、長期債を中心に米国債売りが加速した。10年米国債と30年米国債の利回りは大統領選の結果が判明した11月6日に急上昇した。トランプ氏が選挙で掲げた公約の柱は、減税と大幅な関税引き上げである。減税は景気を刺激する効果をもたらすことから、想定より堅調に推移していると受け止められている米国経済が一段と成長加速する可能性が高まる。関税引き上げは、輸入品のコストを上昇させることから、ようやく落ち着いてきたインフレ圧力が再燃されるとの懸念が広がる。また、トランプ氏が公約通りにこうした財政政策を実行した場合には、大規模な歳出削減で相殺しない限り、財政赤字は急拡大することになる。つまり、米国債は大幅に増発される懸念が強まり、財政赤字プレミアムは拡大するとの読みが拡大する。
米国債利回りは上昇
10年米国債利回りは、先週末に4.38%で取引を終えた。一部では、利回りは今後も上昇を続け、2023年終盤に付けた5.00%に達するとの予想さえある。
連邦公開市場委員会(FOMC)は、今年9月に0.50%幅で利下げを実施し、先週の11月FOMCでも0.25%の利下げを実施した。背景には、雇用市場の堅調さに陰りが出てきたことが主因だが、これにトランプ再選による政策リスクが加わり、市場の先行きを読みにくくしている。
インフレ抑制には時間がかかる見込み強まる
今週11月13日に発表される10月の米消費者物価指数(CPI)では、コア指数は、前月比、前年同月比とも、前月9月と横ばいが予想され、このところのトレンド通りに推移するとの予想が大勢を占めている。また、総合CPIは4カ月連続で前月比0.2%上昇と、前年同月比では今年3月以来の上昇加速が予想されている。これは、ハリケーン「ヘリーン」と「ミルトン」による被害により、自動車や自動車部品への需要が高まったことや、避難命令によりホテルに宿泊する人が増えたことも影響している。
また、生産者物価指数(PPI)も発表が予定されている。9月はガソリン価格が下落したことで、前月比横ばいだったが、10月はわずかながら上昇が予想されている。米FRBの目標である2%への収斂には、まだ時間がかかり、物価上昇圧力の緩和は、一筋縄ではいかないとの受け止め方は強まっている。特に、サービス価格インフレは、鈍化してはいるものの、期待されたようなペースではないことがはっきりしてきている。また、パンデミック期の物価のゆがみは、遅々として解消していない。
FRBの判断は?
パウエルFRB議長は、先週7日のFOMC後、「起伏はあるもののインフレ鈍化は続いており、その道筋は非常に一貫している」とし、1回や2回の望ましくないデータがパターンを変化させることはないと述べた。ただ、インフレ抑制に成功するとの楽観的な見方はしていないだろう。幸いな点は、インフレ率を上回って主要企業の収益が伸びていることだろう。第3四半期の決算発表は、一部でまだら模様の成長も見られたが、概ね良好だった。今後、年末商戦を迎えるが小売売上高も今までのトレンドを維持し、まずまずの伸びを示すと予想される。10月小売売上高は今週15日に発表される。FRB高官の発言にも注意を払っておきたい。今週は、12日にウォラーFRB理事が銀行の会議で講演する。パウエルFRB議長、ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、ローガン・ダラス連銀総裁の講演も今週、予定されている。