ハリケーンとストライキの影響濃い内容
11月1日に米国労働省統計局が公表した雇用統計は、非農業部門雇用者数が、前月比1.2万人増と、事前予想の10万人増を大きく下回った。雇用者数は2020年以来の低い伸びにとどまった。前月9月の同雇用者数も22.3万人増と速報値の25.4万人増から下方修正された。8月の同雇用者数も下方修正され、7.8万人増とされた。
統計局によれば、10月の統計を集計するにあたり、事業所調査の回収率は47.4%と平均を大きく下回り、1991年以来の低水準だったことを明らかにし、ハリケーンが影響した可能性が高いと説明した。9月下旬から10月上旬にかけて米国南東部は2つのハリケーン「ヘリーン」と「ミルトン」による被害が出た。事業所調査の回答率は、通常90%近くあり、その後も集計が進むことで統計は修正される。10月の雇用者数は大幅に修正されることになろう。
また、10月にはボーイング社の大規模なストライキが統計に影響した。実際に、今回の統計では、製造業の雇用が4.6万人減と、2020年4月以来の大幅な落ち込みとなった。ボーイングの従業員3.3万人にストライキが影響した部分が大きい。10月は医療と政府部門で雇用が増加したが、他の業種ではほぼ横ばいないし減少、小売りや運輸・倉庫、娯楽・ホスピタリティーなどで減少に転じた。これら業種には、天候の影響が大きかった可能性が高い。
家計調査に基づく失業率は4.1%で、前月から変わらずだった。失業率は家計調査に基づいており、雇用者数ほど影響を受けないと考えられている。ただ、10月に職を失った人は2月以来の大幅な増加となり、離職者数は減少した。労働参加率は小幅に低下し、25歳から54歳では83.5%と、4月以来の水準に下げた。
11月FOMCでの0.25%幅の利下げ実施は変わらず
このところ発表された経済統計では、米国経済は第3四半期にも、堅調に成長したことが示された。一方で、インフレは引き続き根強く、下方硬直性ともいえるようなしつこさがあるものの、インフレには、一定の抑制が効いていると判断できる状況にある。今回の雇用統計は、上述のように天候やストライキというノイズが大きく、正当な評価が難しいが、雇用市場の減速と解釈すべきいくつかの点もあり、これらをどう見るかで判断は分かれるだろう。
9月FOMCでは、雇用市場の軟化傾向を下方リスクへの傾きとみなして、0.50%幅の利下げを判断した。同時に、FRBは雇用市場により重点を置いた判断を下すことを示している。金融市場のメインシナリオは、11月FOMCでの0.25%幅の利下げを実施することであり、今回の雇用統計を受けても、金融市場では11月と12月の2回のFOMCでいずれも0.25%幅の利下げを実施するとの予想は変わっていない。
今週は、米大統領選の投票日を迎えるうえ、FOMCも予定されている。不確実性が拭われる方向に向かうのかどうかが注目される。