インフレ抑制には自信、景気下支え姿勢を鮮明に
10月23日、カナダ銀行は政策金利を0.50%幅で引き下げ3.75%とすることを決定した。カナダ銀行は2022年3月に米国同様、利上げを開始した後、2023年7月までに政策金利を5.00%まで引き上げた。しかし、今年6月に0.25%幅の利下げを実施すると、7月、9月にも0.25%幅での利下げを実施した。今回は、4会合連続の利下げが確実視されていたが、パンデミックが発生した2020年3月以来となる0.50%の大幅利下げを実施した。景気抑制的な状況を早期に調整することを選択した模様である。
前回9月の会合では、マックレム・カナダ銀行総裁は、予想以上に経済成長が弱いことと、インフレ率が急速に低下するリスクについて懸念を示していた。直近の経済指標では、10月15日に発表されたカナダの9月消費者物価指数(CPI)が、前年比+1.6%と、8月の+2.0%から鈍化した。インフレ目標の範囲内に収まる状況になっており、まさに、前回会合時に懸念したシナリオが浮上していると判断したものと考えられる。
カナダの第2四半期GDPは前期比年率+2.1%と、従来の予想である+1.8%は上回っている。先月27日に発表された7月の月次GDPも前月比+0.2%、前年比+1.5%と、共に事前予想や前回値を上回っていた。しかし、高い水準に金利を据え置くことが、ひとつのリスクとの判断だろう。
マックレム・カナダ銀行総裁は、最近の物価統計がインフレ目標である2%水準を下回って前年同月比1.6%まで低下したことをもって、「低インフレに戻っていることを示唆している」と指摘、今後は低位安定したインフレを維持することに注力する考えを示した。また、利下げのペースを加速させるとともに、新型コロナウイルス禍後の高インフレ時代は終わったと示唆した。一方で、リセッションは回避したいとのであろう。深刻なリセッション(景気後退)を伴わずにインフレを正常化させ「ソフトランディング(軟着陸)」シナリオの実現する確度を高めたいという意図が読める。
カナダ銀行は、今年の国内総生産(GDP)伸び率予想は1.2%にとどまるが、来年には2.1%に加速するとの予想を維持している。なお、インフレ率は1-3%の目標レンジの中間付近で推移する見通しとした。