コアCPIは前年同期比3.3%上昇と水準を維持
9月米国消費者物価指数(CPI)は、事前の予想を上回る伸びを示した。変動の大きい食品とエネルギーを除くコアCPIは、前月比で0.3%上昇し、前年同月比では3.3%上昇だった。いずれも事前予想を0.1%上回る上昇で、物価上昇圧力はここ数ヶ月緩和する傾向にあったが、9月には、そうした緩和の動きというよりも、上昇する圧力が強まったと考えられる。コア指数の伸びは、過去3カ月の年率で3.1%上昇に達した。
9月の物価上昇の主な要因は住宅関連と食品で、これらが前月比上昇率の75%余りを占めた。縮小傾向にあった食品とエネルギー商品を除く財のコア価格でも、上昇幅が拡大に転じた。 同価格が上昇したのは23年6月以降では2回目であり。新車と中古車、衣料品や家具も価格が上がったことが影響した。
住宅とエネルギーを除いたサービス価格は0.4%上昇し、今年4月以来の大幅上昇となった。価格の伸びは3カ月連続で加速しており、2023年序盤以来で最長となった。特に、自動車保険や医療費、航空運賃の上昇が目立った。サービス分野で最大部分を占める住居費は前月比0.2%上昇だった。ただ8月には前月比0.5%上昇しており、そこからは減速したことになる。
FRBが注目する賃金の伸びも目立つ。9月の実質平均時給は前年同月比で1.5%上昇して、2023年6月以来の大幅な伸びを示した。
今月4日に発表された9月雇用統計では、事前予想を上回る堅調さが確認された。そして今回、重要な物価指標であるCPIでも、インフレ圧力の鈍化は、はっきりとは確認できなかった。そうなると、11月FOMC会合での利下げを巡っては、見方が大きく分かれる事になるだろう。金融市場関係者は、0.25%の利下げを実施すると期待する参加者もいれば、金利を据え置くとの予想に傾いた参加者に分かれる。
繰り返し指摘しているが、FRBのミッションは2つで、雇用の最大化とインフレをコントロールすることである。7-8月と雇用統計で弱めの統計が続き、雇用市場の先行き見通しに不透明感が高まったことで、経済のダウンサイドリスクを最小化するために、9月FOMCで0.50%幅という普通ではないカードを切った。しかし、9月雇用統計は、思いの外、雇用市場が堅調であることを示したため、0.50%幅の利下げがやや踏み込みすぎた可能性が懸念される。そして、今回のCPIで、インフレは沈静化しつつあるものの、目標である2%に向かって収斂していくとの確信は、得たとは言えない。こうなってくると、米FRBは今後、金融緩和のペースについて、慎重にならざるを得ないだろう。
9月の指標を受けて9月FOMCでの利下げを再評価すると、大きく見れば、金利を下げていくという方向感に間違いは見当たらないが、より時間をかけて、ゆっくりとした緩和政策を実行していくスタンスを明確にすることになるのではないか。11月FOMCで、引き続き0.25%幅の利下げが行われる可能性はゼロとは言えないが、11月と12月合わせて0.25%幅の利下げが1回実施されるにとどまる可能性も出てきた。金融市場の反応には気をつけておくべきだろう。