追加利下げへの期待も拡大
米FRBは9月17-18両日にFOMCを開催し、政策金利であるフェデラルファンドレートを0.50%幅引き下げ、年4.75-5.00%とすることを決定した。今回の決定には、12人の委員のうち、賛成が11人、反対が1人だった。FOMCの終了後に公表された声明では、「雇用とインフレの目標達成に対するリスクはほぼ均衡している」との判断を示し、今後は、雇用の最大化を図り、インフレ率を目標である2%に収斂させることにコミットすると宣言した。インフレについては「依然として幾分高い水準にある」との判断を示し、一方で、雇用の伸びは鈍化しつつあるとして、雇用市場の回復を目指した金融政策スタンスにシフトすることを示唆した。
パウエルFRB議長は会合後の記者会見で、「今回の決定は、緩やかな経済成長とインフレ率が目標の2%に向かう状況において、政策スタンスの適切な再調整により雇用市場の強さを維持し得るという、われわれの確信の強まりを反映している」と語った。一方で、パウエル議長は0.50%幅の利下げが、今後継続すると見込まれる金融緩和策(=利下げ)のペースになるとは想定しないほうが良いとの警告も発した。
異例だったのは、今回の会合で唯一反対票を投じたのが、ボウマン理事だったことだろう。同理事は0.25%幅の利下げを主張し、0.50%幅の利下げ案には反対票を投じた。FOMCでの政策決定に、FRB理事が反対したのは2005年以来のことである。ボウマン理事は、20日の発表文で、「より中立的な政策スタンスに向けて慎重なペースで動くことが、インフレ率を2%目標まで引き下げる上でさらなる進展を確実にすると考える」として、政策金利の0.50%幅の引き下げは、FRBがインフレとの闘いで勝利宣言したと受け止められ、それが拙速な結果となるリスクを指摘した。
今週の金融市場は不安定な動きも
米FOMCで0.50%幅の利下げが実施されたことから、米ドルは主要通貨に対して値を下げた。ドルインデックスは、先週、断続的に上値を切り下げ、100.75まで下げた。
金融市場では、11月FOMCで、再び0.50%幅の利下げが実施され、年内に合計0.75%幅の利下げが実施されることを織り込んでいる。こうした期待は、米国経済の成長維持というシナリオにとってはプラスで、リスク資産の上昇につながっているが、パウエル議長の警告に反した非常にハト派的な予想であり、期待が剥落する場合には市場の調整に繋がりかねないことには注意が必要だろう。
今週は、経済指標では米新規失業保険申請件数(9月21日終了週)とGDP確報値、PCE価格指数の発表が注目される。FRBは、政策の重点をインフレ抑制から雇用の最大化にシフトしており、その判断が妥当かどうかを見極めるうえで、上記指標は重要となる。
また、FOMCが終了し、ブラックアウト期間を終えたことから、パウエル議長をはじめとするFRB高官の発言・講演などが相次ぐと予想される。今後の金融政策を理解する手掛かりとなりそうな発言が材料視されるだろう。