物価統計はデフレ・スパイラルを示唆
国家統計局が9月9日に発表した8月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比で0.6%上昇だった。7月は同0.5%上昇していた。食品とエネルギーを除くコアCPIは8月に同0.3%上昇と、2021年3月以来、3年ぶりに小幅な伸びにとどまった。CPIの伸び悩みは、中国の消費需要が全般に弱いことを示している。所得が減少する中、食品価格を除けば、物価は辛うじて上昇しているに過ぎないことが確認された。
8月の生産者物価指数(PPI)は前年同月比1.8%で低下した。PPIは2022年後半以来、マイナスが続いている。
長期デフレの可能性も高まる
GDPデフレーターは今年第2四半期で5四半期連続のマイナスとなった。2025年もマイナスが続く見通しで、これが予想通りであれば、1999年以来の長期マイナス局面に入っていることになり、1993年のデータ開始後で最長のデフレ局面となる。消費や投資需要が弱いうえに、電気自動車(EV)など、大量の余剰生産在庫を抱えるセクターでは激しい価格競争も起きている。
中国経済で発生している事象を見ると、デフレは一段と深刻化するリスクを感じざるを得ない。家計の賃金は減少傾向にあり、これが家計の支出削減につながっている。価格は、下落しているのみならずさらに下がると見込まれ、これが消費者の購入タイミングを後連れさせる。企業では、売り上げが減少するため、新規投資の抑制や給与削減・雇用削減を引き起こす。そして、立ち行かなくなった家計や企業が破産・破綻する。こうした悪循環が、いつドミノ倒しのように加速しても不思議ではなくなってきている。
対策を求める声も強まる
消費者物価の公表に先立つ9月6日に、中国人民銀行の易綱前総裁は外灘金融サミットのパネルディスカッションで、中国当局はデフレ圧力との闘いに直ちに集中すべきだとの厳しい認識を示した。易前総裁は、今後数四半期でGDPデフレーターのプラス転を期待していると述べたものの、内需が弱いと問題を指摘し、積極的な財政政策と緩和的な金融政策の必要性を訴えた。物価低迷のテコ入れを求めることは異例とも言える。
中国当局は家計支出の促進のため、今年に入ってからも、次々と消費刺激策を展開した。しかし、増え吹けど踊らずで、消費は伸びず、中国政府が設定したGDP成長率目標の5%前後を達成するにも、黄色信号が点灯しかねない。物価と賃金は、悪循環に陥っており、更に拍車が掛かる前に、より積極的な財政政策スタンスの変更が政策対応として必要な時期に来ているのではないか。