9月FOMCでの利下げ開始示唆
8月23日、パウエルFRB議長は、ワイオミング州ジャクソンホールで開かれたカンザスシティー連銀主催の年次シンポジウム「ジャクソンホール会議」で講演した。毎年、夏休みの終わりに開催されるこの会議でのFRB議長の講演は、その後の金融政策についてのヒントとなるとして、内容に注目が集まる。
今回も、①7月の弱い内容の雇用統計をどう解釈しているか、②政策金利スタンスについて利下げカードを含めて言及するか、③2024年内に着手する金融政策の戦略レビューの3点にが、言及されるかに注目が集まった。
パウエル議長は「金融政策を調整する時が来た」「方向性は明確に利下げ」と語り、今後入手するデータ次第ではあるが、9月FOMCでの利下げを示唆した。インフレについては、鈍化する方向に進展が見られるとの認識を示し、インフレ率はFRBが目標とする2%に収斂する道筋をたどっているという確信を深めたと述べた。これは、2022年3月に開始された利上げ局面が転換点に差し掛かったことを意味している。
また雇用市場については、最近減速していることを認め、市場環境が一段と冷え込みことは、望みも歓迎もしないと言及した。これまでは、インフレ率を目標に近づけるため、政策金利を約20年ぶり高水準となる5.25-5.5%のレンジに維持してきた。しかし、雇用市場の堅調さは薄れてきたことが確認されている。このため、今後は、雇用市場が減速しすぎないよう、「強い労働市場を維持しつつ、物価の安定を回復させる」両にらみのスタンスに移行することになる。
先週の雇用統計のベース修正では、雇用者数の一段の下方修正が発表された。市場の一部には、8月の雇用統計が7月と同様に再び低調な内容となった場合には、9月会合で通常より大きい0.50%の利下げに動くとの予想が根強い。パウエル議長が、今後の統計次第と述べた背景には、実体を見極める必要性を意識してのことであろう。
そのため、①や②については、言及があったが、③に関して、9月FOMC以降の利下げペースや引き下げ幅について、パウエル議長は何らのヒントも与えなかった。FRBは、物価上昇ペースの鈍化が今後進むのかを確認しながら、雇用市場も安定させるという難しい課題に向き合うことになろう。米国経済のソフトランディング実現には、金融政策のかじ取りが大いに影響することになろう。