7月の米・小売売上高は堅調
7月の米国小売売上高は前月比1.0%増加と伸び率では2023年1月以来の大きさだった。雇用統計以来、景気失速懸念が広がっていたが、それを覆すような堅調な消費動向が示唆されたことで、金融市場参加者にとっては、サプライズとなった。
今回の統計では、13項目のうち10項目で増加が見られた。特に、6月に落ち込んだ自動車販売が大きく持ち直したことが寄与した。ただ、自動車を除いたベースでも前月比0.4%増加で、自動車とガソリンを除いたベースでも同0.4%増加だった。電子機器と家電製品も堅調な売上を示した。電子商取引(eコマース)売上高は小幅な伸び。大手小売業者が実施した販促で、大幅な値引きにより消費が刺激されたとの見方が強い。国内総生産(GDP)に算入される、飲食店と自動車ディーラー、建設資材店、ガソリンスタンドを除いたコア売上高は前月比0.3%増えた。これで3カ月連続して増加を示した。
市場の景気失速懸念は先走り過ぎ
物価高と高金利は景気の腰を折るとの懸念が膨らんでいたが、そうしたブレーキにもかかわらず、個人消費は底堅さを維持していることが示唆される。ただ、小売各企業は、消費者のセンチメントが悪化していることを指摘し始めている。今後は、賃金の伸びが鈍化する中で、個人消費の持続性については疑問が投げかけられている。消費支出は贅沢品から生活必需品にシフトしており、全体としては低調に推移するとの予想は多い。
小売売上高は、財(モノ)の購入を主に反映する統計である。個人消費全体に占める割合は比較的小さく、サービス消費の割合の方が大きい。その点でも、月末に発表される7月の個人消費支出(PCE)データは、財・サービスの実質消費の詳細を明らかにするという点で注目される。
利下げ見通しは交錯、債券市場は不安定な動き続く
債券市場では、小売売上高の発表を受けて、短期債を中心に大きく動きがあった。9月FOMC会合でFRBが0.50%の大幅な利下げを実施するとの観測は後退し、0.25%幅の利下げとなるとの見方に傾いた。金融政策に敏感な2年米国債利回りは0.16%上昇し、4.12%で取引を終えた。このところ、債券利回りは激しく動いているが、年内に1.00%もの利下げが実施されるとの予想は、やや期待が大きすぎる。FRBは金融緩和を始めるにあたり、まず、0.50%もの大幅な利下げを行うことは、余程の事態に陥っていることが必要であり、極めて慎重にならざるを得ない。当面、利下げ幅を巡っては、強弱両方の見方が交錯するだろう。債券市場の動きは不安定に推移することに注意が必要である。