注目されていた米国の7月インフレ指標が発表された。
卸売物価指数(PPI)
まず、8月13日に米国労働省が発表した7月の卸売物価指数(PPI)は前月比0.1%上昇だった。伸びは前月の同0.2%から鈍化した。前年同月比では2.2%上昇で前月の同2.7%上昇からは伸びが鈍化した。
食品とエネルギー、貿易サービス部門を除いたコアPPI指数は前月比0.3%上昇でこれは6月の同0.1%上昇から上昇幅が拡大した。前年同月比では3.3%の上昇で6月の同3.2%上昇からはやや上振れた。
全体としては、モノ(財)の価格は上昇したものの、サービス価格は低下したため、価格上昇圧力が相殺された形となり、伸びが鈍化した。
消費者物価指数(CPI)
翌8月14日に米国労働省が発表した7月の消費者物価指数(CPI)は、前月比0.2%上昇し、6月の同0.1%低下からは反転上昇した。前年同月比では2.9%上昇し、伸び率は前月の同3.0%から鈍化した。CPIが前年同月比で上昇率3.0%を下回ったのは、2021年3月以来初めてである。
変動の大きい食品とエネルギー成分を除くコアCPIは前月比0.2%上昇だった。6月は同0.1%上昇だったので、やや伸び率は拡大したことになる。前年同月比では3.2%上昇で、伸びは前月の同3.3%から縮小、2021年4月以来の低い伸び率に逗まった。
エネルギーを除くサービスコストは0.3%上昇と6月の0.1%上昇を上回った。自動車保険料が1.2%上昇したことが寄与した。コア財価格は0.3%低下した。6月は0.1%低下だった。新車価格が6カ月連続で低下したことが主因で、中古車とトラックも低下した。衣料品価格も低下した。
9月FOMCでの利下げ期待は強まる
7月のインフレ統計が、卸売物価指数PPIでも消費者物価指数CPIでも、伸びが相応に鈍化していることが確認され、インフレ圧力が緩和していることが示されてことから、金融市場でのFRBによる金利引下げ期待は強まった。
ただ、金融市場が織り込む利下げ幅は0.25%を優に超えてほぼ0.50%に達している。インフレ率は、FRBが目標とする2%を引き続き上回っており、米国経済の腰折れというような事態にでも陥らない限り、難しいのではないか。
9月FOMCでの利下げ観測を後押し
インフレ圧力の抑制をメインテーマに2022年3月から断続的に金利を引き上げてきたFRBは、政策金利5.25-5.50%水準に達して後は、その水準で金利を維持し、景気にはブレーキが掛かるような抑制的な政策を取っていた。しかし、このところインフレ圧力は緩和傾向が見えてきている。9月FOMCではブレーキがきつすぎないよう政策転換をして、0.25%幅の利下げを行う可能性が高まっている。
次の注目材料は個人消費支出(PCE)価格指数だが、今回のPPI統計でPCEに影響する多くの項目でも、インフレ圧力の緩和方向への改善が示唆された。物価上昇圧力が十分に緩和するとの確信が得られれば、FRBは雇用市場にブレーキをかける高金利政策の修正に踏み切るとことができるようになる。