市場大荒れ 香港運用会社、「荒れ相場にオルタナ投資」(Asiaウオッチ)

Quick Money World インタビュー (2024年8月7日配信)

【NQN香港=福井環】

世界的な株の乱高下や為替の急変動を受け、債券や株式といった伝統的な資産への投資家のリスク警戒が高まっている。香港を拠点にウエルスマネジメント業に携わるウェルズ・グローバル・アセットマネジメントの長谷川建一・最高経営責任者(CEO)に、運用戦略などについて聞いた。

―今回の株安を受けて、運用戦略に変更はありますか。

 「当社は伝統的資産とは異なる『オルタナティブ運用』に重点をおいており、今回の市場変動を受けても戦略を変える必要はないと考えている。右肩上がりを続けていたようにみえる米S&P500指数をみても、ITバブル崩壊やリーマン・ショックなどの下落や、さらに過去には8年以上にわたって下落している局面もあった。特に、2022年に米金融引き締めが始まって以降、金融緩和期の相場ではなくなったことを考えると、米国株や世界株だけ買っていれば大丈夫というのは楽観的すぎるというのがそもそもの考え方だった。今後も世界的にインフレ圧力は残り続けるとみている」

―具体的な運用資産や戦略について教えてください。

 「一つに、伝統資産とは相関性の低い特性を持っている資産に投資している。例えば貿易ファイナンスや生命保険を担保にした貸し出しを投資対象としたもの、不動産融資や中小企業への融資などだ。ファンド・オブ・ファンズの形で顧客に投資機会を提供しており、年間の利回りは8~10%程度を目安としている」

 「また、一部の債券や株式に投資しているファンドでは、売り持ち(ショート)を併用する戦略を採用している。ボラティリティーが上昇すると収益性が高くなる傾向があるので、荒れ相場にフィットする」

―オルタナティブ運用は増えていますか。また、注意点について教えてください。

 「長期的にみると、欧米のファミリーオフィスや大学基金はオルタナティブ運用にシフトしてきている。例えば、一部のシニアローンは利回りが米ドル建てで年利10~12%程度ありながら、デフォルト時にも優先的に資金回収がしやすく、高金利環境が続くとみられるなかで投資家からの需要が高い」

 「ただし、こうしたプライベート資産は流動性が高いとはいえない資産が多い。景気変動が大きくなる場合や突発的な市場イベントが起きた際には流動性に注意が必要だ」

【略歴】日米の大手金融機関、香港でウエルスマネジメント業を経て、2022年にウェルズ・グローバル・アセットマネジメントを設立。