ネガティブサプライズとなった7月米雇用統計

予想外に弱い雇用統計

米国労働省が8月2日に発表した7月雇用統計は、金融市場にはネガティブ・サプライズとなった。
非農業部門雇用者数は、前月比11.4万人増加と事前予想を大きく下回り、前月6月の雇用者数も速報値の20.6万人増から17.9万人増に下方修正された。今回の雇用者数の伸び鈍化は、情報分野や自動車製造業での人員削減が反映された。臨時雇用も減少した。こうした動きは、景気が下降していく前兆であることが多い。
また、失業率は4.3%に上昇し、3年ぶりの高い水準に上昇した。失業率上昇の背景には、職を失って離職した人が多かった模様である。また、労働参加率は62.7%に上昇、特に25-54歳の労働参加率は84%にまで上昇し、2001年以来の高水準となった。これは、職を離れていた人が職を求めて復帰してきたことが影響しているようである。
平均時給は前月比で0.2%増と6月の同0.3%増から伸びが縮小し、前年同月比でも6月の3.8%増から7月は3.6%増と3年ぶりの低い伸び率となった。

雇用市場に急変も
7月の雇用統計は、全般にこれまでの統計よりも弱い内容で、堅調に推移していると考えられてきた雇用市場が、ペースダウンしていることが示唆される。

7月31日に開催されたFOMCでは、金融政策の変更は見送られた。これは、雇用市場が堅調で、賃金の上昇圧力が特にサービス価格の上昇を下支えしていることから、インフレ圧力が緩和していくという確証が得られていないということが最大の理由であった。しかし、FOMC後の記者会見で、パウエルFRB議長は、インフレがコロナ禍後のピークから低下してきていることから、雇用市場への過度な打撃を防ぎたいとの考えを示し、インフレをより重要視する考えからシフトすることを示唆していた。

先走る金融市場は9月50bps利下げを織り込み始める

金融市場では、9月FOMCでの利下げの実施がほぼ確実とみるようになった。パウエル議長も「早ければ次回9月の会合で政策金利の引き下げが選択肢となり得る」とも述べている。ただ、先週発表された経済指標は、景気が急減速していることを懸念させる内容が続いた上に、雇用統計も弱い内容だったことを受けて、短期金融市場では9月会合での0.25%幅ではなく、0.5%幅での利下げが実施されることを織り込み始めた。政策金利の変更に敏感な2年米国債利回りは週間で4.25%から3.88%へと急低下した。高い水準で長い期間、政策金利を維持している現行の金融政策では、米国経済を過度に鈍化させてしまうというリスクを市場は懸念している。株式市場では、企業業績の悪化を懸念した売りが誘発された。

一方で、労働省は無関係を強調したものの7月にテキサス州を襲ったハリケーン「ベリル」による悪天候の影響から、仕事をしなかったと答えた人が急増したことが、雇用統計に影響した可能性も考えられる。単月のデータでの判断を嫌うFRBだが、9月FOMCまでには、8月の雇用統計も手に入る。0.25%幅の利下げ実施の可能性は格段に高まったであろうが、0.50%幅での利下げはやや無理があると筆者は引き続き予想している。

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