政策金利は5.00%に
8月1日、英国の中央銀行であるイングランド銀行(BOE)は、金融政策委員会(MPC)で、政策金利を0.25%幅引き下げ、5.00%にすることを決定した。利下げの実施は、2020年のパンデミック発生時以来である。
BOEは、今後、政策金利がどの水準で落ち着くか、またどのくらいのスピードで利下げが実施されるかについては、具体的なガイダンスを示さなかった。ベイリーBOE総裁は記者会見で、インフレ圧力は十分に緩和されたと判断して、本日利下げを行ったと述べた。ただ、インフレが今後も確実に低水準にとどまるかどうかについては、注意する必要があるとして、今後の金融政策については、会合ごとに決定すると、慎重な言い回しを維持した。また、金融政策で緩和を急ぐ必要はないことも強調した。
賛成5、反対4、微妙な判断
直後に公表された議事要旨によると、MPCメンバー9人のうち、5人が0.25%幅の利下げを支持したものの、4人は据え置きを主張した。完全に意見が割れており、難しい判断だったことがうかがえる。
BOEによれば、英国のインフレ率はようやく望ましい水準に戻ったものの、物価の上昇圧力は引き続き高いことが気がかりで、基調的なインフレはこれまでの予想より強く、総合インフレ率は2024年末までに2.7%まで上昇するとの見通しさえ示している。そして、来年以降のインフレ動向は、賃金とサービス価格の動向次第だとの見解も示している。また、MPCは、英国経済の成長率も予想を上回っているとしているにもかかわらず、今回、利下げを決定したのである。すなわち、MPCは、インフレが再燃するリスクを認識していながら利下げを決定したことになる。
BOEの利下げ発表後、10年英国債利回りは、3.88%まで低下した。2024年内に追加緩和が実施されることへの期待も強まり、12月までに約0.35%の利下げが実施されることを織り込んでいる。為替相場では英ポンドは、対ドルで一時買い戻しも入ったが、結局は売りに押され1ポンド=1.2725ドルまで、売り込まれた。
しかし、今回の利下げ決定は「微妙なバランス」に基づくものだったというべきだろう。MPCは、インフレ率を中期的に2%の目標に収れんさせるために、景気抑制的な金融政策を続ける必要があると述べており、0.25%はあくまで微調整の範疇ではないか。インフレの根強さは、まだ決定的には解消されていないことに、注意しておくべきだろう。これは、FRBやECBにとっても同様なことではないかと筆者は見ている。