3中総会が閉幕
中国共産党の重要会議である第20期中央委員会第3回総会(いわゆる3中総会)が閉幕した。国内の個人消費が伸び悩み、第2四半期の国内総生産(GDP)成長率も4.7%増と、5四半期ぶりの低い成長率となる中、経済成長へのコミットメントがより強く出てくるかとの期待もあった。しかし、今回の決定文書からは、中国経済を推進するために先進的な製造業に注力するとの、従来の計画を繰り返したに過ぎず、政策への期待感は肩透かしされた印象である。
不動産市場下支えも底入れは見えず
5月に、中国政府は、突如として、住宅ローンの頭金条件を緩和する措置を取り、地方政府による売れ残り住宅の買い入れも支援する方針を示した。これを受けて、上海、深圳、広州の3大都市では、市政府が住宅購入者のために借り入れの頭金要件を緩和し、住宅ローン金利を引き下げて、借り入れ負担を軽減する大規模な販売支援策を発表した。
こうした広範な不動産救済策を実施したが、主要70都市の新築住宅価格(政府支援住宅を除く)は、その5月で前月比0.71%下落を記録した。これは、2014年10月以来ほぼ10年ぶりの下げ幅だった。中古住宅価格も5月は前月比1.00%下落し、2011年以来最大の落ち込みを示した。
こうした不動産市場対策には、それほど効果が見込めないとの見方が根強い。住宅価格の下落は、住宅購入を手控える動きにつながる、負のスパイラルに陥っている。残念ながら、この悪循環に終止符が打たれるという確信は未だに乏しい。中国では家計資産の約78%を不動産が占めている。住宅購入者は、長年積上げた貯蓄に加えて、友人や親族から金を借りて住宅を購入することがほとんどである。不動産価格が緩む中で、買い向かうには心理的なハードルが高い。そして、こうした動きは、中国国内の消費全体にも悪影響を与え、経済の足かせとなっている。
S&Pグローバル・レーティング社によると、中国の2024年の住宅販売は、従来予想の前年比5%減から、同15%減になると予測を下方修正した。住宅販売額では10兆元を下回る水準となる。これは、2021年に記録した販売額のピークから、約半分に過ぎない額となる。フィッチ・レーティングス社も、年間販売見通しを前年比15-20%減にとどまると予想を下方修正した。
中国人民銀行が金融緩和を実施
そんな中、7月22日に、中国人民銀行は主要な短期政策金利の一つである7日物リバースレポ金利を0.1%幅引き下げて1.7%に引き下げることを発表した。同金利の引き下げは約1年ぶりである。そして、その発表から1時間後、貸出金利の指標となるローンプライムレート(LPR)の引き下げも発表した。1年物LPRは3.45%から3.35%に、住宅ローンの参照金利となる5年物LPRは3.95%から3.85%にそれぞれ0.1%幅、引き下げた。
これまで、金融緩和に消極的に見えた人民銀行が、急遽利下げを実施した背景は、中国経済が下押し圧力にさらされていることへの危機感だろう。これまでは、為替相場で、人民元への下落圧力が強まることを懸念して、金利引き下げにはコミットしてこなかった。ただ、小幅な金利の引き下げだけでは、家計や企業の借り入れ意欲を刺激するには十分とは言えないだろう。今年に入って低調な、政府支出や債券発行等を見れば、財政拡張策にも期待が持てない状況が続く。