7月5日、米国労働省は6月の雇用統計を発表した。
非農業部門雇用者数は前月比20.6万人増加と、事前の予想を上回った。5月は速報値27.2万人増から同21.8万人増に大幅下方修正された。家計調査に基づく失業率は前月の4.0%から4.1%に上昇した。平均時給は前月比0.3%増と前月5月の同0.4%増から、前年同月比でも3.9%増と前月の同4.1%増から伸び幅が縮小した。これは、過去3年間で、最低水準の伸び幅である。労働参加率は62.6%に上昇し、25-54歳の労働参加率は83.7%と、22年ぶりの高水準に上昇した。
雇用者数の増加数が伸び悩み、失業率が2021年11月以来の高さに上昇したことから、雇用市場の需給が幾分、緩和した可能性が考えられる。業種別では、製造業の雇用者数が前月比8000人減少して、今年2月以来の落ち込みを示したことも注目される。
インフレ圧力は幾分緩和へ
賃金の上昇率も縮小したことから、インフレ圧力も緩和方向にはあるとみることはできるだろう。金融市場の反応も、金利が低下し、9月FOMC時点での利下げを織り込む幅が拡大したことからすれば、FRBが年内に利下げを開始するとの期待を強めるものと解釈したというわけである。
雇用市場は需給関係の緩和傾向が緩やかに継続していると言えるだろう。第2四半期の雇用者数の増加幅は、確定値では速報値から下方修正されて、伸びは第1四半期に比べて縮小傾向にある。3カ月平均では2021年初め以来のペースにまで減速している。また失業率は断続的に上昇し、4%台にのせてきている。賃金の上昇幅も、4%台を割り込んで、物価上昇を支えてきた賃金上昇圧力も緩和してきた。インフレ圧力を支えてきた構図が、変化してきているように見える。
正当化に十分な理由とまでは言えない今回の統計
ただ、そうした変化の兆しは否定できないものの、米FRBが今年9月のFOMCで利下げを行うことを正当化するほど、確信を持てる材料かどうかは、不透明だと言わざるを得ない。今回の雇用統計だけでは、雇用市場の冷え込みとまでは言えず、むしろ堅調なままである。そのうえ、インフレ率は依然としてFRBの目標を上回っている。方向感としては、FRBが望んでいる統計とはいえるが、適度に強いデータであると判断するのではないか。
経済指標は単月で判断されるべきものではない。雇用統計にしても、7月もしくは8月の雇用統計で続けて6月の統計を踏襲するものとなるかどうかに注目しておきたい。なお、次回のFOMC会合は、7月30-31日、その次は9月17-18日に予定されている。
今週は、パウエルFRB議長が9日に上院で、10日に下院で金融政策に関する半期に一度の証言を行う。また、11日にはCPIが発表されインフレ率の動向の手がかりとなる。なお、パウエルFRB議長は、7月の会合FOMCか8月のジャクソンホール会議で9月の利下げを示唆する可能性があるとの想定を伝える報道内容も出ていた。