6月12日、マクロン仏大統領は、国民議会(下院)を解散し総選挙を実施することを発表した。欧州議会選挙のフランス国内での得票は、ルペン氏が率いる極右政党の国民連合(RN)が32%だったが、マクロン大統領率いる与党連合の得票は、わずか15%にとどまる惨敗だった。ちなみに、ドイツでも野党保守系政党連合が得票率31%を得たのに対し、ショルツ首相率いる与党・社会民主党(SPD)の得票率はわずか15%にとどまり、過去最悪の惨敗となった。
マクロン大統領としては、自身の政策を国民に改めて問いただし、政権基盤の確保を狙った解散権の行使だが、リスクの高い賭けとみる厳しい視線が注がれている。フランスで下院が解散され選挙が実施されるのは、シラク政権下だった1997年以来のことである。総選挙は、第1回投票が6月30日、決選投票が7月7日に実施される。
マクロン仏大統領が総選挙に打って出ることを決定したことで、政局が流動化し不安定化することや、野党勢力の台頭で公的債務が拡大することへの懸念が強まった。実は、フランス財務省が公表した財務データによると、2024年の仏財政赤字は従来見通しの対GDP比4.4%から、大幅に上方修正され5.1%に達する見通しである。これに、さらに財政拡張となれば、フランス政府の財務状況への懸念が高まることになろう。実際に先週、左派連合は2027年までに年1,500億ユーロの追加支出を公表した。10年フランス国債利回りは3.21%に上昇した。
フランス国債とドイツ国債の利回り格差(スプレッド)にも注目が集まった。10年国債で比較したフランスとドイツのスプレッドは80bpsまで拡大し、2012年以来の水準に達した。しかし、市場の予想は、仏独国債利回りのスプレッドが一段と拡大すると見ており、100bpsまで広がるとの予想も出ている。
フランス総選挙は景況感にも影響を与えている。先週発表されたユーロ圏購買担当者指数(PMI)は、景気回復の初期段階にあり改善が予想されていたが下げに転じた。このままでは、景気失速の可能性もあり、株価にも影響を与えかねない。先週金曜日の取引では、フランスのCAC40指数は前日比0.6%安と反落した。ストックス欧州600指数も同0.7%安で取引を終了した。総選挙が景気に与える影響を注視したい。