ディスインフレの流れは確認できず
2024年は、世界的な物価の上昇圧力が後退し、主要中央銀行が金融緩和・利下げに転じると期待されてきた。米国FOMC(中央銀行の政策を決定する会合)が毎四半期に公表する「経済予測」でも、3月の時点では年内3回の利下げが、6月の時点では年内2回の利下げが、それぞれ予想として示された。残り6カ月でFOMCは4回開催される(7月、8月、11月、12月)。4回のうち2回も利下げが実施されれば、これは決して緩やかなペースというわけではない。
しかし、FOMCが発表する声明の内容を見ると、やはりインフレ圧力が緩和の軌道にないこと、目標であるインフレ率2%上昇への収斂には確信が持てていないことは明らかである。最近の経済統計では、雇用市場が安定かつ堅調であり、労働需給の引き締まり感は根強く、これが賃金の上昇を通じて、消費を支える構図が続いていることを示唆している。このため、FOMCは、今後数カ月の間は、政策金利を据え置き、雇用情勢とインフレ圧力の推移を見守ることになると予想するのが妥当だろう。
年内2回の利下げ予想は妥当か?
金融市場は、年内2回の利下げ予測が示されたことで、金融緩和期待が維持され、ゴルディロックス(ぬるま湯)シナリオが再び力を得て、株式相場も債券相場も買われる展開となっている。そして、ECBとカナダ銀行が0.25%幅で政策金利を引き下げたことも、主要中央銀行が利下げに転じるかのようなムードを醸成して、楽観的な見方を支える材料となっている。
ただ、欧州やカナダと米国の状況は異なることに注意が必要だろう。ユーロ圏経済もカナダ経済も、米国経済に比べれば景気後退に陥るリスクは大きい。今回ECBは、金利水準が景気のブレーキとして効きすぎてしまうことを危惧して水準訂正と考えらる。今後、連続した利下げが必要となるかは、ECBですら見通せないと声明では論じており、この先の利下げ予測なども出されていない。
ECBやカナダ銀行は利下げも
6月FOMCは、ECBやカナダ銀行の利下げの後に開催されたが、政策金利は据え置かれた。これは、米国経済が非常に堅調であること、年初期待されたほどディスインフレが進んでいないことがその理由である。先週のPMIをはじめとする米国経済指標は全般に堅調なままで、米国経済のダウンサイドリスクは限界的と見てよいだろう。弱いユーロ圏のPMIデータに比べると、米国経済の堅調ぶりは際立つ。
金利先物市場が見込む9月FOMCでの利下げの確率は7割程度まで下がってきた。年2回の利下げすら難しいという状況も十分有り得ることを視野に、債券ポートフォリオを運営すべきだろう。
今週は、6月の米個人消費支出(PCE)価格指数が注目されている。また、米財務省が合計1,830億ドル規模で、2年債、5年債、7年債の入札を実施する。需給面では、重くなろうが、利下げ期待が残り、逆イールドがきつくなくなった今、ある程度の需要は見込めるため、順調な入札となるだろう。