米国経済は底堅く、米ドル選好が強まる
6月の米サービス業購買担当者指数(PMI)速報値が、2022年4月以来の高い水準に上昇したことで、米FRBによる金利引き下げの開始が一段と遅れるとの見方が強まり、ドル金利が上昇した。そのため、米ドルは主要通貨に対して上げ、米ドル独歩高となった。
6月FOMCでも示された通り、基本シナリオは年内2回の利下げ実施であるが、米国では、経済成長も雇用市場も底堅く推移しているほか、金融市場も相対的に安定した状況が続いいており、 米ドルへの選好度が高まる流れを変える材料は見出しにくい。
主要通貨では、もっとも弱い通貨が日本円で、総選挙で保守党の歴史的大敗が懸念される英ポンドと中央銀行による金利引き下げで先行するスイスフランも下げ幅を拡大した。日本円は対ドルで年初来11%下落、スイスフランは対ドルで年初来6%値を下げている。
<ドル円>
先週末には、ドル円は、一時1ドル=159円84銭まで下落し、8週間ぶりの円の安値を付けた。米国経済指標が堅調な米国経済の足取りを示唆したことで、米FRBが金融政策を転換するタイミングが後づれするとの見方が強まった。米FRBによる利下げが行われるまで、ドル高の流れが変わることとの見方が強まっている。
ドル円は、重要な心理的節目として意識される160円に近づいているが、日本円を買う材料がないことも事実である。今年5月の前回高値であるドル円が160円17銭を超えそうな勢いであるが、米財務省が6月20日に公表した外国為替報告書で、為替操作の「監視リスト」に日本を加えたことで、日本政府は表立って為替介入に打って出ることが難しくなった。そのため、今週、ドル円が高値を更新する可能性は十分高まっていると考えるべきだろう。日本の通貨当局は、過度な変動があれば適切な行動を取る構えをみせているが、すでに4月と5月に記録的な規模の為替介入を行っているため、余程のことがなければ口先介入など、実弾なき手段にとどめたいのではないか。しかし、それであれば市場に見透かされる可能性が高い。日本政府・日銀にとっては試練の相場が続くだろう。
筆者は従来、日本銀行が4月の段階で、マイナス金利解除のみならず、金融政策のタカ派転換をすべきだったと指摘してきた。先週も、日銀は国債買い入れ減額を実施し、金融緩和姿勢の払しょくに出ることもできたはずである。しかし、これすらも7月末の政策決定会合に先送りした。1ドル=160円超えとなれば、一段と輸入物価の高騰、価格転嫁の流れは強まり、金融政策が後手に回る最悪のシナリオが待っている。