金融緩和期待を後退させるサプライズ
6月7日に米国労働省が5月の雇用統計を発表した。
非農業部門雇用者数は(事業所調査、季節調整済み)で、前月比27.2万人増加と事前予想を上回った。4月の確報値は16.5万人増で、速報値17.5万人増から下方修正された。
家計調査に基づく失業率は5月に4.0%となり、過去2年で初めて4%台にのせた。
賃金の伸びは、平均時給が前月比で0.4%増と前月の0.2%増を上回った。前年同月比では4.1%増とこちらも前月の4%増を超えた。
今回の統計は、雇用市場が引き続き堅調に推移しており、高金利や物価高にも関わらず、賃金の上昇が需要を支え、米国経済の勢いを維持していることを示唆した。こうした状況では、インフレ圧力は根強く続く可能性が高く、米FRBは、金融政策の変更には、慎重な姿勢を取るものと考えられる。
雇用統計を受け、金融市場では、債券価格が下落し利回りは軒並み上昇した。米FRBによる利下げ開始の時期は、今年9月との期待が後ろ倒しとなり、12月以降にシフトした。株式市場も、金融緩和期待が萎む中、ゴルディロックスシナリオが後退し、上値は追えなかった。為替市場では、主要通貨に対して米ドルが上昇した。
雇用統計は、直近2カ月ほどは、雇用市場の引き締まり感が緩和されたように受け取れるものだった。そのため、金融緩和を期待する市場参加者は増えていたが、今回の統計は、雇用市場が安定かつ堅調であることを示しており、残念なデータと言える。FRBは、今後数カ月の間は、政策金利を据え置き、雇用情勢とインフレ圧力の推移を見守るスタンスを採るだろう。
先週は、ECBとカナダ銀行が0.25%幅で政策金利を引き下げることを決定した。これで、主要中央銀行は利下げに転じることを期待するようなムードも一部には出ていた。しかし、今週12日に予定されるFOMCでは、政策金利は据え置かれるだろう。なお、12日には、5月の消費者物価指数(CPI)が発表される。