米国PCE価格指数(4月)
インフレ率上昇にやや落ち着き出る
米FRBがインフレ指標として最も重視する個人消費支出(PCE)価格指数(4月)は、食品とエネルギーを除くコアベースで、前月比0.249%上昇、前年同月比では2.8%上昇と伸びが鈍化、今年に入って最も小幅な伸びにとどまった。
PCE総合価格指数は、前月比0.3%上昇、前年同月比では2.7%上昇だった。インフレ調整後の実質PCEは0.1%減と予想に反してマイナスに転じた。実質PCEが減少したことは、緩和期待を根強く待つ市場参加者には朗報だろう。
消費も所得も伸び悩み
消費も、財の支出が減少し、サービスへの出費も軟化した。財への支出は0.4%減で、ガソリンや自動車の購入が減少したことが目立った。サービス支出は、インフレ調整後で0.1%増と、昨年8月以来の低い伸びとなった。ヘルスケアの出費は堅調だったが、外食や娯楽、輸送といった他のカテゴリーはマイナスとなった。
家計消費は、堅調な雇用市場とそれを背景にした所得の伸びに支えられてきた。これが米国経済の成長を支えてきたが、上述の通りGDPで見ても、なお着実に伸びている。ただ、成長度合いは、鈍化する兆しも散見されるようになってきた。
賃金上昇ペースにも、やや減速感が感じられる。個人所得は0.3%増で、賃金・給与は0.2%増と、5カ月ぶりの小幅な伸びにとどまった。実質可処分所得は0.1%減少し、過去3カ月で2度目の減少を記録した。貯蓄率は3.6%で前月から変わらずだったが、これは2022年12月以来の低い水準である。
今回4月のPCE統計は、インフレ圧力が緩和に向かっている可能性を示しており、インフレ率がFRBの目標である2.0%に収斂していくシナリオへの期待を支持すると言えるだろう。特に、住宅とエネルギーを除くサービス価格の動向は、下方硬直性に特徴があり、FRBも注視している要素の一つである。
ただ、FRBが、インフレが鈍化に確信を強められるデータかどうかというと、そうとは言えない内容である。若干の低下は見られるものの、インフレ率が低下する傾きは緩慢で、FRBが近い将来に利下げに転じることを正当化できるデータではない。6月FOMC会合で、金融政策が変更されることはないだろう。