過去10年で最大の下落
中国国家統計局が5月17日に70都市の新築住宅価格を公表した。これによると、4月に新築住宅価格は前月比で0.58%下げ、前年同月比では3.51%下落となった。3月は同2.7%下落だったので、下げ幅は拡大したことになる。4月の中古住宅価格も前月比で0.94%下落した。前年同月比では6.79%下落した。
4月の住宅価格は新築住宅も中古住宅も、前月比、前年同月比、いずれの比較でも、過去10年間で最大の下落率を記録したことになる。
動きを見せた中国政府
この統計発表を受けて、中国政府は、低迷が長期化している不動産市場テコ入れのための取り組みを一段と強化する新たな政策を発表した。
中国人民銀行は、住宅購入を支援するため、住宅ローン金利の下限を撤廃するとともに、住宅購入者の頭金比率の下限を引き下げると発表した。低利資金を3000億元程度供給するプログラムを設定することや、不動産市場の低迷が特に深刻な地方には、独自の下限金利を設定できる認め、住宅ローン金利の下限を実質的に撤廃することを発表した。人民銀の陶玲副総裁によれば、政策銀行や国有の商業銀行、株式制銀行など21の機関に年利1.75%の低利資金が提供される。今年第1四半期の新規住宅ローンの平均金利は3.69%まで低下していたが、これを下回る水準に下げることを許容する措置である。
そして、地方政府が選定する地方の国有企業には融資を行うよう金融機関に催促し、売れ残った不動産物件を妥当な価格で取得できるよう支援するとのことである。また、住宅を購入する際の最低頭金比率を引き下げ、初回購入者には15%、2戸目の住宅購入者には25%までとする緩和措置を発表した。(従来の比率はそれぞれ20%と30%)
不動産開発業者の資金繰り救済と需要喚起策
国営新華社通信の報道で、何立峰副首相は、「不動産セクターは、大衆の利益と経済発展に深く関係しており、地方政府、開発業者、金融機関はそれぞれの責任を確実に果たす必要がある」と述べた。そして、開発業者の資金繰りのひっ迫を緩和する手段として、地方当局が売却済みで遊休状態の土地区画を買い戻すことにも触れた。また、手頃な価格での住宅供給と都市の再開発、公共インフラ建設を推進する必要性も強調した。
都市の住宅価格が目立って下落していることは、それだけ、不動産市場が低迷していることを示す。その回復支援に向け、中国政府は今回、思い切った措置を打ち出したといえる。しかし、住宅購入の需要換気に躍起になっていることは、それだけ強い危機感を持っているということでもある。
今回の政策の効果が、出てくるかどうかは見極めが難しい。深刻な構造問題が解決に向かうきっかけになるかどうかは、住宅需要を刺激して、消費者が明るい見通しを取り戻せるかどうかにかかっている。