3月22日、欧州連合(EU)首脳会議に出席したラガルドECB総裁は、ユーロ圏内のインフレ率は低下し続け、経済成長は底打ちから回復に転じるとの見通しを示した。ただし、ユーロ圏経済が回復から持続的な成長に結びつくには、生産性の向上が必要で、そのために投資拡大を促進する必要があると付け加えた。
ユーロ圏経済は、昨年の夏場以降は不調に陥り、消費は減速、生産もドイツを中心とする製造業の不振から減速している。課題となっていたインフレ率は、ECBがインフレ抑制策として実施した金利引き上げにより、年3%を下回る水準に落ち着いてきた。このため、ECB首脳の中では、経済活動に過度の負担をかけるべきでないとのハト派の意見が目立つようになってきた。
ECB理事会で勢い増すハト派
ECB首脳は、ユーロ圏経済の落ち込みが厳しくなるリスクの方に目が向き始めている。インフレ率は、一度はPPIが10%を超えるような高い水準から、2%の目標が見えるところまで、引き下げることができたとの自負は強いだろう。それより、景気が大幅に悪化するようなことになれば、パンデミックで景気刺激策を取った意味も薄れることになる。
インフレ率が低下し、2%目標に向かって、収斂していくとの見込みを持てるのであれば、ECBは利下げを判断する可能性はゼロではないだろう。市場の予想の大半は6月理事会での利下げ判断を予想しているが、4月理事会での利下げ判断も、可能性としてあり得るとのニュアンスも出てきている。22日も、センテノ・ポルトガル中銀総裁やシクルーナ・マルタ中銀総裁などが、早い段階での利下げ実施に前向きなコメントをした。
SNBのサプライズ利下げ
こうした動きに、追い風となったのは、スイス国立銀行の利下げだろう。3月21日、スイス国立銀行は、政策金利を0.25%引き下げ1.50%とした。次回6月理事会での利下げを予想していた金融市場にとっては、サプライズとなった。ヨルダンSNB総裁は、過去2年半のインフレとの闘いが奏功し、インフレ率が1.5%を上回ることはないとの見通しになったことで、金融緩和が可能となったことを明言した。また為替市場で、スイスフランの上昇圧力が強いことも利下げの理由として挙げた。
金融市場では、ECBによる4月の利下げ開始も取りざたするようになるのではないか。