3月12日に発表された米国消費者物価指数2月CPI統計では、変動の大きい食品とエネルギーを除くコア指数が前月比0.4%上昇と事前予想の同0.3%上昇を上回った。前年同月比でも3.8%上昇となり、これも事前予想の同3.7%上昇を超える数字だった。前月も実際の伸びのほうが大きく、2ヶ月連続のサプライズとなった。総合CPIは前月比で0.4%上昇し事前予想の水準だったが、前年同月比では3.2%上昇となった。
2ヶ月続いてインフレが根強く続いていることを示す統計が発表されたことで、米FRBが利下げに慎重姿勢を維持していることを支持する内容だったと言える。実際、FRB高官の一部は、より広範に物価上昇圧力が後退していることを確認してから、利下げに転じたいとの認識を示している。パウエルFRB議長は先週、利下げを開始するために必要な確信が近づいていると発言していたが、CPIは、根強いインフレとの印象を際立たせることとなった。
労働統計局によると、総合CPIの前月比での上昇要因の60%余りを住居費とガソリンが占めたという。他には、中古車や衣料品、自動車保険、航空運賃が上昇した。航空運賃の伸びは前月比では2022年5月以来最大の伸び率だった。ただ、住居費は前月比0.4%上昇にとどまり、前月から伸びが鈍化した。帰属家賃も上昇ペースが減速した。住宅とエネルギーを除いたサービス価格は前月比0.5%上昇で、伸びは前月の同0.8%から鈍化した。住居費はディスインフレの傾向が続いている。
財の価格は過去1年間は、持続的に下落基調を維持してきた。しかし、食品とエネルギー商品を除く財のコア価格は昨年5月以来で上昇した。下落基調が変化し始めている可能性があり、気がかりである。
雇用市場の堅調さに加え、CPIが下げ渋っていることで、FRBは利下げ判断に慎重な姿勢を維持するだろう。3月FOMCでの利下げ実施は、ほぼ無くなったと見ている。金融市場では6月FOMCでの利下げ開始を期待し、織り込んでいるが、その織り込み具合もやや後退した。
経済統計では、次に注目されるのは3月29日に発表予定のPCEである。FRBが意思決定に際して最重要視していると言われる数字で、コアPCEで見ると2023年中は下降トレンドをたどり、2024年1月には前年同月比で2.8%水準まで低下してきた。これもCPI同様に下げ渋るのか、これまでのトレンドを維持して下げるのか、注目したい。