弱い国内消費に頭を悩ませる中国政府 ~ 12月経済指標も悪化

習近平国家主席の新年メッセージ

中国の習近平国家主席のテレビ演説による新年のメッセージは、中国経済が直面する問題の厳しさを感じさせるものだった。習氏は、2023年が一部の企業と国民にとって困難な年だったと表現し、中国経済に逆風が吹いていることを認めた。その上で、「景気回復の勢いを強固にし、着実かつ長期的な経済発展を達成するために努力する」ことを表明した。中国政府は「国民により良い生活を提供する」ことに尽くすとの意思表明とともに、「子どもたちの養育と教育、若者の雇用と成功、高齢者の医療と介護」を充実させることにコミットした。

中国政府は2024年のGDP成長率目標を2023年と同様に5%前後に設定すると予想されているが、達成はより難しくなると見られている。

12月の指標は悪化

足元では、中国経済の脆弱さを示唆する経済指標が増えている。中国国家統計局が12月31日に発表した12月の製造業購買担当者指数(PMI)は49.0と、11月の49.4から一段と低下した。これは半年ぶりに低い水準である。製造業の新規受注指数は48.7に低下し、新規輸出受注も45.8まで悪化した。サービス業PMIは49.3と11月と同水準で50を下回った。国家統計局も、一部企業から「国内有効需要の不足と海外受注の減少」が最大の問題だとの報告があったと認めており、2023年に顕在化した国内消費の弱さに焦点を当てた対策・政策が求められよう。

消費者物価が示す「消費の弱さ」も相変わらずである。消費者物価のマイナス幅は11月に一段と拡大した。オフシーズンや寒波の影響で低調な需要や消費者信頼感の弱さは、一段と低調ぶりが浮き彫りとなった。このままでは、不動産市況の改善は見込まれないだろう。欧米の景気の足取りも芳しくない中、輸入も減少しており、明るい先行きは見通せていない。

中国経済の成長力を改善させるには、危機的な状況にある不動産市場を安定させ、デフレに似た悪循環から脱することが必要となる。しかし、上述の通り、景況感は改善しておらず、厳しい味方が多い。習指導部は2024年も景気を重視するスタンスを示しており、景気刺激策を求める声も聞こえているはずだが、中国政府としては、財政出動には及び腰な姿勢を頑なに貫いており、期待には応えていない。 

加えて、政府の政策にはチグハグな部分も多い。最近決定されたゲームを巡る規制が施行されたことで、投資家の信頼感は損なわれ、ゲーム大手3社の時価総額は一時、計800億ドル相当を失った。外国人投資家は、中国政府の意思決定に疑問符を突きつけており、2023年の中国株の購入額は年間ベースで過去最低だった。中国政府の不透明な政策決定が続けば、金利差による資本流出以上に、中国株離れが進む可能性も残る。

金融政策で踏み込むしかないか

財政が動かない中、金融当局には緩和措置で先行するを圧力が強まっている公算が高い。中国人民銀行が2日に公表した資料からは、中国人民銀行が12月に、複数の市中銀行に低コストの資金を約500億ドル供給したことが明らかとなった。主要市中銀行に対する担保付き補完貸し出し(PSL) プログラムの残高は、昨年12月末現在で3.25兆元に増加した。11月は2.9兆元だったので3500億元増加したことになる。これは2022年11月以来の増加幅である。

目的は、明らかに景気下支えのためであり、住宅やインフラ開発のプロジェクトに対する資金供給を強化している可能性が示唆される。もともと、市場関係者の間では、人民銀行が公営住宅の建設促進にこの資金を使うことを期待する声があった。政府は不動産セクターの支援や今年の成長安定化にこうした資金を活用することは可能で、PSLプログラムは当局にとっても市場にとっても、注目度の高いツールとなる可能性がある。

また、人民銀行は今月内にも、追加利下げを実施するとの可能性が取り沙汰されている。当面の政策の焦点は、金融政策となる可能性が引き続き高い。

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